営業活動で欠かせない「商談」ですが、一体何から取り組めば良いのか、本番はどういった進め方をすべきなのか知らないセールスパーソンも多いことと思います。
そこで今回は、商談の流れについて紹介します。
そのステップごとに、すぐに取り組めるような「しなければならないこと」についても解説しています。
ぜひ、自分にできることから真似してみてください。
商談とはそもそも何だろう?
商談の流れを知るために、本章ではまず「商談」の定義について改めて見直してみましょう。
商談とは? | ・商材を販売し、契約を結ぶ場。 ・基本構成は、自社(自分)と取引先の顧客。 ・近年の商談の定義は「顧客の悩み・課題を解決する場」であり、必ずしも売る側の商材が買われることが目的とされない。 |
商談の内容とは? | ・商談ごとに契約内容が異なる=契約内容は顧客の悩みの内容に左右されるため、その商談内で「決定すべきこと」も商談ごとに幅広く存在する。 例:どのぐらい割引されるか、どのようなサポートが受けられるか……など ・顧客の悩みを明らかにし、個別に存在する「顧客側の課題」を解決するために商材が提供されるため、すべての案件が、売る側が設定した価格通りの「同一の」契約内容となることは基本的にない。 ・商材を販売される側(営業を受ける側)は、商材に魅力を感じれば購入する契約を結ぶ。 |
その他 | ・販売する契約が達成されなくても商談と呼ぶ。 ・一度の商談ですべて決まるとは限らない。 |
「商談」と「打ち合わせ」どう違うのか
顧客を相手とした場合の、「商談」と「打ち合わせ」の違いについても知っておきましょう。
商談の特徴は?
商談は、何らかの悩みが解決される場です。
解決方法の多くは、一方が提供する商品・サービスによりもたらされます。
文字通り、商売が行われる=金銭のやり取りがある=売買契約が発生する、場です。
売る側は、自社商材を顧客に買ってもらい、金銭のやり取り(契約内容に伴う支払い方法による)もその場で発生するため、緊張感があります。
商材についての取り決めを行うために双方が話し合う場でもあるため、交渉の一種とも言えるでしょう。
例えば売る側にとって、商材の値引きをすることは自社の売上に影響を与えるためこの上なく慎重さが求められます。
買う側にとっても同じことが言えます。
打ち合わせの特徴は?
打ち合わせは一般的に「商談後」のイベントとされることが多くなります。
商談で交わした契約内容に基づき、どのように導入するか、どんなオプションがつけられるか、といった「すり合わせの場」とも言えます。
商談の流れ
商談には以下のように一連の流れが存在します。
- STEP1:準備・仮設設定
- STEP2:(訪問)
- STEP3:挨拶
- STEP4:アイスブレイク
- STEP5:会社案内
- STEP6:【ヒアリング→課題の検出→解決策の提示・商品説明】
- STEP7:クロージング
- STEP 8:お礼メール・フォロー
※【】内は1セットとして扱い、都度クロージングを交えつつ順不同に繰り返すこともある。
各ステップについて細かく説明します。
STEP1:準備・仮説設定
商談で最も必要な行為であるともいえる部分が、この準備段階です。
理由は、商談のメインである「顧客の悩み」と向き合うための一番初めの段階となるためです。
商談の前には仮説設定が必要
商談が、これから訪問する顧客の悩みを解決する場であるということは前章まででご理解いただけたと思います。
それゆえ、セールスパーソンがすべきことは、あらかじめ「自社商材が顧客の悩みを解決するために寄与できる可能性を探る」ということになります。
この、「顧客がこんなことに悩んでいるのではないか?」と探ることを仮説設定といいます。
仮説設定の構築プロセスをさらに細分化してみましょう。
すると、顧客がどんなことに悩んでいるのかに当たりをつけるための下調べ=準備が必要であると言えます。
仮説設定のために必要な準備
仮説設定を構築するための準備はどのように行うべきかについて解説します。
本段階での準備は主に企業研究や業界研究、市場調査などです。
以下ステップのように進めると良いでしょう。
1:(これから訪問する)顧客がどんな商品・サービスを取り扱っているかについて調べる・その詳細についても知識を得る・主力商品について知る
↓
2:上記商品・サービスが提供されている対象(ターゲット・顧客層・業種・規模)について知る・詳細がわからなければ当たりをつける
↓
3:上記の販売方法やマーケティング方法について探る
↓
4:上記までを踏まえ、自分がセールスパーソンとしてどの商材を用いてどのような提案をしたいか考える・顧客にどのようなメリットがあるかを洗い出す
↓
5:実際に対面する人物のパーソナルについて調べる(ファーストコンタクト、立場、など……)
本ステップについて自分の頭にインプットできたかどうかを測定するためにはロールプレイングが便利です。
「御社はこのような商品を扱っていらして、このような販売手法が主力であるため弊社の〇〇がお役に……」というような言語化ができるようになるまでロールプレイングを繰り返してみましょう。
この時にヒアリングシートなどを作成しておいて、ロープレ本番に臨むと、トークスクリプトが作りやすいため、おすすめです。
企業研究、業界動向の把握におすすめな分析方法
商談準備や仮説設定のために便利な分析方法をご紹介します。
3C分析
3C分析は、対象を絞って分析します。
3Cとは、Customer、Company、Competitorの頭文字Cを示します。
今回の場合、「顧客の購買行動を引き出すためにはどうすべきか」を主な目的とします。
分析方法は、以下の通りです。
Company(自社/当事者):これから訪問する顧客はどんな企業で、どんな市場(規模)にいるのか以下の項目から強みや弱み、成功要因を分析。顧客の弱み=課題と位置づけることで、仮説設定が立てられる。分析にはSWOT分析が用いられることが多い。
数値:売上・社員数・市場におけるシェア度、顧客数、社員一人あたり売上、顧客単価など
数値以外:予算など経営リソース、サプライチェーン、開発環境、営業手法、サポート体制、自社商品のメリット・デメリットなど
Customer(顧客):「これから訪問する顧客の主要取引先」の情報をマクロな「PEST分析」、ミクロな「5フォース分析」などで分析する。営業をかける側の商品・サービスを取り入れることによって補強できそうな部分を探り、仮説設定とする。
・Politics(政治的因子を分析):政治の動向、規制緩和の状況、新しい税制、法改正、デモ等
・Economy(経済的因子を分析):景気の動向、消費者物価指数、為替や株。金利の動き、経済成長率、等
・Society(社会的因子を分析):少子高齢化のような年齢分布、社会の多様性の進み方、最新のトレンド、消費者志向の変化、等
・Technology(技術的因子を分析):新しい技術革新、イノベーション、特許出願状況、インフラ整備の進み具合、IT化の普及状態、情報元の分布、等
・新規参入が起こりうる可能性、その脅威度
・業界内における敵対関係の発生具合、その強さ
・代替品が選ばれてしまう可能性、その脅威度
・買う側の交渉力はどれくらいか
・売る側の交渉力はどれくらいか
Competitor(競合他社):競合他社の状況を結果と要因に分けて分析する。営業をかける側の商品・サービスを利用することで競合他社に勝てる可能性を探り、仮説設定とする。
結果:売上・社員数・市場におけるシェア度、顧客数、社員一人あたり売上、顧客単価など
要因:サプライチェーン、開発環境、営業手法、サポート体制、類似商品のメリット・デメリットなど
4P分析
4P分析とは、商材を売る側にとっての分析です。
どうやって商材を売るかという戦略を立案する際に、注目すべきポイントをパターン化したフレームワークのことです。
以下4つの「P」から始まる単語について分析します。
・Product(商品):自社商品の誇れる点や弱点を分析する
・Price(価格):顧客の予算や市場、競合他社の価格などを参考に決定する
・Place(場所=流通経路):商品の売り方(対面営業、既存・紹介営業など)を決定する
・Promotion(宣伝):オンライン広告やテレビ、新聞などメディア媒体でどういった宣伝方法にするかを決める
セールスパーソンにとって、自分が扱っている商材がどのような意図で現在の状態(姿、形、性質etc…)となっているのかを知ることは大きな強みになります。
商材の理解を深めることで、顧客からの質問に的確に答えられるだけでなく、課題解決の一助となるでしょう。
STEP2:挨拶・名刺交換
相手企業を訪問し、案内され担当者と対面したら、名刺交換が始まります。
名刺交換は、目下の人から行動することが一般的なマナーとされているため、先にセールスパーソン自身が名刺を差し出します。
名刺を渡す際には、相手と目を合わせつつ社名・部署名・フルネームをお伝えします。
やはりロールプレイングで事前に練習しておくと、自然体で伝えることができます。
なお、名刺交換後は頂いた名刺を名刺入れの上に置いたまま、商談終了時に相手がしまうまで保っておきましょう。
STEP3:アイスブレイク
初回訪問時はとりわけ初対面同士が顔を合わせるため、どうしても緊張してしまいます。
そこで緊張をほぐすためにアイスブレイクを行います。
アイスブレイクは、商談における本題以外のことについて雑談する場です。
本ステップでも、事前準備で得た業界知識などが非常に役立ちます。
アイスブレイクとして業界の話題を振ってみることで「この人詳しいんだな」といった相手の評価を得て、その後の会話を有利に進めることも可能。
相手の状況によってはアイスブレイクを取り入れるべきか省略すべきか、どんな話題を選ぶべきかといったセオリーが存在します。
STEP4:会社案内
アイスブレイクによって緊張がほぐれた後は、自分の会社の紹介に入ります。
本ステップは相手の興味に合わせ、常にフルコースで会社案内してしまうことは避けましょう。
自分がこれから紹介する商材に合わせ、「業界シェア何位である」とか「顧客満足度◯%」といったわかりやすく簡潔かつ、売り込み色が強くならない・冗長でない紹介がベターです。
STEP5:ヒアリング・仮説検証・課題の検出
続いては「顧客の課題を認識する」ためのステップに移ります。
商談の定義が顧客の悩みを解決することでもあるため、本ステップは商談の肝となります。
徹底的に取り組んだ準備を活かす時です。
また、準備段階で打ち立てた相手の悩みを推測した仮説設定が本当に正しかったかどうかの検証も可能です。
仮説が正しければ準備してきた根拠を顧客に提示し、間違っていれば改めてヒアリングで需要を探りましょう。
ヒアリングで顧客に伺うことは「悩み」や、ストレートに「課題に感じていること」「企業としての目標」などが適切です。
ヒアリングで使えるテクニックとして「クローズドクエスチョン」があります。
はい/いいえで答えられる質問
例)「過去に弊社のお客さまの中で、~~な事に悩まれている方がいらっしゃいました。御社ではそのような悩みをお持ちではないでしょうか?」
事例を提示されることにより、初めて顧客自身が問題を認識できることもあります。
もし顧客の課題がうまく見つからない場合などがあれば、使ってみてください。
STEP6:商品説明・解決策の提示
顧客の課題を自社商材で解決できる可能性が生まれたら、商品説明や料金説明に移ります。
商品説明こそが商談と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、プロセールス協会ではこの商品説明のステップを「商談の軸」とはしていません。
その理由は、商品説明はその企業に属していれば、当然誰でもできるはずであるため。
冒頭から繰り返し述べているように、商談で一番大切な定義は「顧客の悩み解決」です。
つまり自社商材こそが顧客の悩み解決策であると判明したのなら、その時に初めて商品説明ができるのです。
セールスパーソンに求められるのは、顧客の困りごとと自社商材のベネフィットを「調整」する役割です。
顧客のニーズを共有できていないまま、画一的に商品説明をしても興味を持たれることはなく、何の意味もありません。
商品説明は、ほぼクロージングに近い作業です。
顧客のニーズに対して、どれほど今自分が持っている商品が適しているのかがプレゼンできる機会となるためです。
そのため、やはり商品説明も、いつでもどの企業に対しても同じ内容とするべきではなく、顧客の課題に合わせたクローズアップ箇所取捨選択の必要があることがわかります。
また、料金説明は正確に行いましょう。
もし値段の高さなどに難色を示されても、クロージング時にきちんと説明できるようにしておけば問題ありません。
STEP7:クロージング
クロージングは商談を次のステップに進めるために行います。
「これまでの説明にはご納得いただけたでしょうか?」というように、商品を購入して頂いたり、さらにキーパーソンを交えた次回商談のアポイントを取るためにクロージングの時間を使いましょう。
もし顧客が懸念点を持っている場合、その言葉をそのまま受け止めるといった「クッション言葉」のような切り返し話法が便利です。
もし値段が高いと言われた場合「値段が高いというご意見をありがとうございます。では、値段以外の部分にはご満足いただけたということでしょうか?(この価格である理由についてお伝えしてもいいでしょうか?)」といった形で「不安」や「買わない理由」を解消していきます。
購入のステップを進めるようであればそちらを、まだ難しいようであれば次回の商談日を決めるなど柔軟に対応してください。
STEP8:お礼メール・フォローアップ
今後の約束ができたら、商談は終わりだと捉えてしまってはいけません。
すぐ(24時間以内)にフォローメールを出して、本日の商談に時間を作っていただいたことへのお礼を述べましょう。
商談の中で決まったことを簡易的にまとめたメールとしてお送りすると、相手も内容を再確認しやすく、社内でキーパーソンへの共有がしやすくなり、今後の関係性を良好に保つことに繋がります。
お礼メールも、トークスクリプトのようにフォーマットを作っておくと便利です。
もし今回の商談が成約につながりにくそうな終わり方をしてしまったとしても、情報提供メールを定期的に配信することは休眠顧客の掘り起こしにもつながるため必須と言えます。
商談の流れを把握し、顧客の課題を解決できるセールスパーソンになろう!
商談には形式的な流れが存在しますが、盲目的になぞればいいというわけではありません。
商談の本質はあくまで「顧客の悩みを解決に導くこと」です。
セールスパーソンにとって、顧客の課題解決策として自社商材が提示できれば初めて受注・成約に至る可能性が生まれます。
本気で顧客の課題を解決したいと思った結果、商材を提供することになるため、本来営業活動、商談は押し売りのような後ろめたい場ではありません。
ぜひ商談の流れをつかみ、トップセールスに近づけるように取り組んでみてください。