営業の練習には「営業ロールプレイング」が効果的!自分一人でもできる練習法も解説

セールスパーソンであれば、営業スキルは上達させたいものです。

実践を重ねてスキルアップすることもできますが、練習やシミュレーションを行った上で着実にスキルアップをしていきたいという人もいらっしゃると思います。

営業スキルを上達させるために必要な練習は、ただ営業スキルを座学で学んだり、脳内でシミュレーションをしたり、やみくもにおこなっても効果的ではありません。より実践に近い形で緊張感を持って行うことが重要です。

そこで今回は、営業スキル上達のために効果的な練習方法について解説します。練習にあたっては複数名の参加が望ましいですが、一人でもすぐに実践できる練習方法も紹介しています。人が確保できない場合などぜひ参考にしてみてください。

【監修者】 小沼 勢矢

【監修者】 小沼 勢矢

一般社団法人プロセールス協会 代表理事
中小企業サポートネットワーク「スモールサン」YOKOHAMAプロデューサー

脳科学の権威である石川大雅に師事し、40年間3万人以上の成功者の脳と向き合い確立して来た「実証的脳科学」を提供するプロ・アライブ社を承継。2代目経営者となり組織開発や人材教育の場数を踏み、8年で3,500人以上のクライアントに指導してきた実績を持つ。コロナ禍で営業に課題を抱えるクライアントが増加したことをきっかけに成約率80%を達成するための脳科学を基にしたセールスメソッドを確立。価値あるサービスを世の中に上手く届けられずに困っている事業者様を支援したいという想いから、一般社団法人プロセールス協会を設立。セミナー・コンサルティング・会員サービスなどの提供を行う。

複数人での「営業ロールプレイング」で営業の練習をしよう

営業の練習をするには、本番さながらの環境であるに越したことはありません。ただ、日々の商談を練習気分で迎えてしまっては、セールスのプロとはいえません。

そのため営業の練習として、本番をそのままなぞったシチュエーションが再現できる「営業ロールプレイング」をおこないましょう。

営業ロールプレイングの定義とは?

営業ロールプレイングとは、営業をするセールスパーソン・顧客・フィードバックと3役に分かれ、本番の商談を想定した形で演技・役柄を進めるものです。

フィードバック役はベテランのセールスパーソンが望ましいです。経験が浅い人だけでおこなう場合も、あらかじめ録画準備などをしておき「フィードバック役の指摘や方向性が正しいかどうか、後でベテランに監修してもらう」といった機会を設けられるようにしましょう。

営業ロールプレイング7つのメリット

営業ロールプレイングでは、営業経験が少ない人からエキスパートまで、それまで自分にはなかった「第三者からの視点」を手に入れることができます。

そのため、ロールプレイングからフィードバックという一連の過程を経ることによって、セールスに関わる誰もが学びを得られます。

具体的には、以下7つのような「営業力に直結するメリット」が得られます。

対応力「顧客の商材理解度が高い場合、低い場合」など様々なケースを想定した練習ができる
場数を踏まなくても「心構え」が作れる新卒社員でも実際の商談がどのように進められるのかを把握でき、どのタイミングで何をすべきか把握した状態で本番を迎えられる
改善点の発見第三者からのフィードバックにより、新人でも、成績不振なセールスパーソンでも「顧客目線」「プロ目線」の学びが得られる(本番では顧客から自分の改善点を指摘してもらえることはほぼありえない=自分では改善点に気づけない)
準備力本番想定であらゆるパターンに対応したロールプレイングができるため、より詳細な資料など「商談本番を迎えるに当たって、物理的に何が足りないか」が事前にわかる
説明力ロープレとはいえ、相手を納得させなければならないため説明・説得の力が身につく
脱属人化熟練者のノウハウを共有することで、トップセールスとしての技術を各担当者に落とし込める(まずは真似する、など即実践できる)
商品知識ロールプレイングで良い結果を達成するには、前提として自分が扱う商材についての知識が必要となるため、知識が足りていない場合はフィードバック時に補うことができる

営業ロールプレイングの種類

営業ロールプレイングは、以下の通りいくつかの種類に分類できます。

それぞれ得られるスキルが異なるため、自分に必要なスキルに応じた種類のロールプレイングを練習しましょう。

種類特徴・メリット
ケース型ロールプレイング細かく設定を詰めたロールプレイング。商談相手はどんな顧客で、何に悩んでいるかなど具体的に決める。似たケースに対応するための経験を大きく積める。
グループロールプレインググループ内で役割を交代しながら演じる。セールスパーソン側だけでなく顧客の役割も演じ、フィードバックもするため「お客様目線」が体感でき、他人へのアドバイスの方法を学べる。
問題解決型ロールプレイングいま実際に起きている課題や過去にあった特徴的な事例をピックアップするロープレ。「じゃあどうやって解決するか」について深堀りできる実践的な内容。
モデリング型ロールプレイング参考とすべきトップセールスなどのやり方を真似るロープレ。実際に成功している人の技術が共有できる

営業ロールプレイングのやり方と注意点

営業ロールプレイングは本番と全く同じ環境、心持ちでおこなうからこそ実践経験につながります。

本章ではより実践的な経験が得られる営業ロールプレイングのやり方について、段階ごとに解説します。

【STEP1:準備】トークスクリプト(トークシナリオ)を作る

営業ロールプレイングをおこなうにも、商談と同じで初めのうちは慣れないものです。そのため、あらかじめいくつかのトークスクリプトを作っておくと話しやすくなります。

「何も話せない」ままでロールプレイングが終わってしまえば、練習にはなりません。良い点・悪い点が見つからなければ、改善に繋がりません。そうならないために、自分で基礎を作っておくことで後のフィードバック時に叩き台としても利用できるのです。

それでももし何も思いつかないのであれば、実際に結果を残している先輩のやり方を録画する等で丸暗記してみましょう。暗記が大切なのではなく、形だけでも自分だけの「型」を基盤として生み出すことが必要だからです。

またロープレのシチュエーションが決まったら、想定される質問に対する答えを考えるところから始めてみましょう。

【STEP2:準備】舞台設定・役割設定を詳細に決める

ロープレでは舞台・役柄についても綿密に決めておきましょう。「何に悩んでいる顧客なのか」「どんな課題を抱えている顧客なのか」といったシチュエーションを経験することで、後に控えた本番=商談のために必ず必要な「仮説設定」のプロセスがスムーズに進められるようにもなります。

例えば、顧客のペルソナ設定(ごく詳細なターゲット設定)などに基づいて、以下「顧客の詳細情報」「シチュエーション」について細かく決めておくと良いでしょう。

顧客についての詳細情報

  • 予算はどれくらいか
  • 創業年数はいつか
  • こちらの商材についての理解はあるか
  • どんな課題を持っているのか
  • 自社の競合商材が入り込む余地はあるか
  • 顧客の役職は(決済権を持ったキーパーソンなのか?)

など…

シチュエーション

  • 初回商談
  • ヒアリング目的
  • クロージング目的
  • これまでどれだけのやり取りがあったか
  • 既存顧客へのアップセル

など…

【STEP3:準備】撮影機材の準備をする

ロープレのセルフフィードバック方法として効果的なやり方に「自分が話している様子を見る」があります。

自分で自分の話している様子を見返すことで、脳科学的には「メタ認知能力」が高まり、より育てるべき点や改善点が得られます。そのためロープレでは必ず録画を残すべきです。

グループ内で共有できるように、ビデオカメラなどしっかりした媒体で撮影するのも良いですが、準備が大掛かりになってしまい、ロープレの時間が捻出できなくなっては本末転倒です。したがって、基本的には後から手軽に見返せるスマホなど簡単なデバイスでの録画でOKです。

撮影者が確保できる場合は撮影者を、人手がない場合は三脚と撮影台を用意できればスムーズです。

【STEP4:実践】営業ロールプレイングを始める

準備が整ったらロープレ本番に挑みましょう。

ロープレでは、たとえ何か失敗したと感じても最後まで役割を演じ続けることが必要です。

準備段階でどれほどトークシナリオを作り込めても、自分の口から発する場合は感覚が異なります。そのため、シナリオ通り話せるケースはほぼありません。予期せぬことが起こるのは商談では当たり前のことです。

そのため持ち前のトークシナリオを「自分の話し言葉」へ自然に落とし込めるまで、何回もロープレ内外で練習すべきです。

ロープレは【定義】の章でも触れた通り「三人一組」でおこないます。

ある程度の緊張感がなければ本番同様の心理状態が再現できませんので、制限時間を決めたり、毎回人員を変え厳格な雰囲気を意識するなどして本番を迎えましょう。

時間はセクションごとに設定し、人間の集中が続きやすいとされる15-30分単位で区切りましょう。商談本番は数時間かかることも普通ですが、ロープレにあまりに時間をかけると、業務が停滞したり急な用事にも対応しづらくなります。

【STEP5:実践】注意点を意識してロールプレイングをおこなう

ロープレ本番では、前項までの項目に加え、以下の点に注意しましょう。

やるべきではないこと理由
断固として買わない顧客を演じてしまう基本的な「営業での話し方を身につける」という目的から外れるため
同じシチュエーションばかりを連続して扱ってしまう幅広い実践経験につながらないため
飽きを呼んでしまい、緊張感が途切れるため
「ロープレに参加するのは新卒何ヶ月目まで」など制限をかけてしまう実践経験を持っている社員を教材として、新卒だけでなく一般社員も参加することで新たな学びの機会が得られるため
理想は毎日、様々な世代で取り組む
同じ人が何度も同じ役割をつとめる商談で想定される様々な反応に対応する力を養えないため
商談シチュエーションの「終わり」を決めないで臨むロープレのゴールを決めずにいると、時間が間延びしてしまうだけでなく事前準備としてトークシナリオが作りづらいため(例:商談の最後にとりあえずサンプルを使ってもらう、サービスのフリー版をダウンロードしてもらう等)
フィードバックが「だめ出し」ばかりになるフィードバックはベテランがおこなうことが多く、立場が上の者から否定ばかり受けると、単純にモチベーションが低下してしまうため
惰性でとりあえずやる「時間が来たからやる」「だめ出しをしてはいけないのであれば褒めも否定もせず、なあなあで済ませる」となってしまえば、上記とは逆の極端さを生んでしまい、成長が望めないロープレになってしまうため
演じる側が準備としてシナリオの黙読だけしかしていないロープレは商談本番さながらの状態で話さなければならず、事前に黙読だけ、あるいは適当な音読しかしていないのでは発音しづらい単語や言い回しが判明しないため
本番同様・同レベルの資料を使わない本番の営業は必ず資料を見せながらおこなうため
シナリオだけ暗記してやり取りするロープレは「本番同様の練習」とはいえないため
資料を交えた説明の仕方に対応できないため
発話する人がシナリオの丸暗記しかしていない
「会話」が前提であるという練習をしていない
本番では相手がどのような会話の返し方をしてくるかはわからなく、会話の応酬こそが商談であるということを意識すべきであるため

【STEP6:フィードバック】フィードバックを受ける

商談のロープレが終わったら、フィードバック役がセールスパーソン役の評価(必要であれば顧客役の評価)をします。

このとき、前項にもあったように欠点ばかりを指摘しないようにしましょう。

例えば、段階ごとに分けた以下の項目についてどうだったか、というチェック表に基づいて評価しましょう。

評価する側もされる側にとってもわかりやすくなります。

  • 自分がどのような(何をもたらす)セールスパーソンなのかきちんと紹介できていたか?
  • 商談のゴール・目的が意識できていたか?
  • 顧客が胸襟を開いて話せる雰囲気作り・話し方ができていたか?
  • 顧客の属性、顧客が置かれた環境を踏まえた会話ができていたか?
  • 顧客の課題を見抜き、適切な提案ができていたか?

【STEP7:フィードバック】フィードバックを意識したロールプレイングを繰り返す

ロープレを終えてフィードバックが得られたら、一旦すべてを素直に受け入れてみましょう。第三者から見て自分に足りていないことがあったのであれば、顧客への態度で何か欠けていることがあるためです。

そして改善点を踏まえ「極端すぎる」ほどのやり方で自分に取り入れ、新たにロープレに取り組んでみてください。理由は、本番では緊張により「落ち着かねば」と思うあまりに「やりやすい自分」しか出せなくなってしまいがちだからです。

例えば、「相手の話をきちんと聞いているように見えなかった」とフィードバックを受けたら、オーバーリアクション気味に相槌を打ってみる等。

極端に改善点を取り入れて実践してみることにより、もとの自分にあったやり方と改善点とのちょうどいい落とし所が見えてきます。

本番までにこのサイクルをできるだけ繰り返すことが重要です。

【STEP8:本番】本番の商談で実践する

ロープレ、フィードバック、改善点の取り入れを繰り返し実践できたら、商談の本番に臨みます。

本番では、ロープレで培ったやり方を再現できるように取り組んでみましょう。

再現といってもロープレを丸々コピーするのではなく「ロープレの際に描いていた目標」と同じことを達成しようという意識で臨む、ということです。

ロープレで得られたセオリーがすべてインプット・アウトプットできることはありえませんが、目標を意識せずに場当たり的に営業にあたってしまうと、本番を想定しておこなわれたロープレの意味がなくなってしまいます。

逆に、日頃から本番想定でロープレをしていれば、培った力をそのまま本番で発揮できるということでもあります。失敗を恐れずに、むしろ失敗することで新たな改善点を見つけられたと思えるぐらいの気持ちで、本番に挑んでください。

ひとりで営業ロールプレイングをする方法

近年は自宅待機を余儀なくされる状況も多く、三人一組でおこなう営業ロールプレイングができない場合があります。

あるいは長時間ロープレをした後、これ以上相手の時間を使うのが忍びないが、フィードバック内容を実践したい場合などに、ひとりで営業の練習をおこなう方法について解説します。

以下の方法はひとりで実践可能です。社内だけではなく自宅でも自分のやる気次第ででき、周りに迷惑さえかけなければ時間や場所に囚われないため、ぜひ意識的に取り組んでみてください。

【一人用:1】セールストークの練習には録音を駆使する

【STEP3:準備】でも解説したように、セルフフィードバックに適切な方法は自分の声や姿を見直すことです。そのため、シナリオどおりに話せるか実践し、それをスマホなどで録音してみましょう。実際に話すことで、自分がロープレのために参考にした資料をアウトプットしながら身につけることができます。

周りに迷惑をかけない場所であれば、どこでもできる練習方法です。あるいはイヤホンを使って、自分の録音を聞くだけなら人が周りにいても、移動中でもできます。

顔を映した動画であれば、何度も口の動きを見ながら同時に話す練習ができるため意識してみてください。自分で気づいていない所作や、うまく聞き取れない部分の話し方がどうなっているかについて等も認識できるため、自分の弱点に応じてうまく使い分けましょう。

動画であれば、撮影は「顧客の目線」の位置でおこなうことがポイントです。

可能であればトップセールスや先輩の練習などを録音させてもらい、そちらを真似してアウトプットに使う方法も効果的です。繰り返し聞くだけでも、言葉が脳に焼き付いて、勝手に言葉が出てくるぐらい自分の中に落とし込めます。

【一人用:2】セールストーク以外のスキル上達方法

セールストークだけできるようになっても、営業がうまくなったとはいえません。覚えたことを話すだけでは、顧客の突然の質問に答えられないどころか、ヒアリングや課題解決につながらないためです。

そのためセールスパーソンとして必要なスキルを身に着けられる無料セミナーなどに参加したり、「仮説設定」のような商談の準備にも取り組む必要があります。

仮説設定をはじめとした商談準備のやり方については以下を御覧ください。

【一人用:3】数名でのロールプレイングが出来ない場合

ロールプレイングの時間がどうしても取れない場合はどうするべきでしょうか。

もし可能であれば、先輩の商談に同行してセールストークを録音させてもらったり、録画が残しやすいZoom商談のデータをもらう、など「自分が商談している」という想定でシミュレーションしてみる方法が有用です。自分が持っていない技術を取り入れられたり、自分の弱点の改善策を探せるというメリットがあります。

ひとりで練習していてもし緊張感が出ない場合は、あえて先輩や上司など目上の人の席が近くにある場所を選んで上記の仮想ロープレをしてみてください。「誰かの耳に入っている」という状況からは、かなりの緊張感が得られます。

ほか、普段の会話の中で意図的に論理的な話し方である「PREP法」を取り入れながら話すという方法もあります。PREP法とは「結論→理由→例→結論」という話し方で、営業トークとしてよく採用されます。

営業ロールプレイングで実践を意識した練習を重ねて本番に挑もう!

営業の練習方法は、セールスパーソン役・顧客役・フィードバック役からなる三人一組でのロールプレイングがベストです。

ロールプレイングは本番を想定した緊張感で臨み、本気で資料を作るなど本番と変わらない状況を構成することが大切です。

またフィードバック役はセールスパーソンへ改善点を与え、成長に直結する役割を持っています。最終的にはベテランに見てもらうようにしましょう。

営業ロールプレイングは複数名が確保できないと実践できませんが、この外出自粛が当たり前となったニューノーマルの時代ではそれも難しいかもしれません。そんな時はスマホなどでの録音・録画などを駆使した練習法を取り入れてみてください。自分がどのように話しているか、声の大きさやトーン、身振り手振りがどのように見えるかは第三者視点からでないと気づかないものです。1人でもかなり改善点が見つけられ、効果的な練習ができます。

1人での練習に必要なものは「やる気があるかどうか」だけです。ぜひ意欲的に取り組んでみてください。

もし営業未経験でも、上記のように本番さながらの実践経験を得る方法は社内に多くあります。商談を怖がることのないよう、準備をくまなくおこなって本番に挑んでください。