「商談ではアイスブレイクが重要」とよく聞きますが、一体どんなアイスブレイクをすれば良いのでしょうか?そもそも商談のどのような場面で必要なのでしょうか?
アイスブレイクには「商談のどこで挟むべきか」「どんな話題が適しているのか」といったコツがあります。コツをおさえることで、さまざまな業界の顧客を相手にした商談に対応できるようになります。
そこで今回は、なぜ商談にアイスブレイクが必要なのか、商談のどんな場面でアイスブレイクをすればいいのか、どんな話題が適しているのか等について解説します。
ぜひ本コラムでアイスブレイクをマスターして、商談の場で実践することでセールスパーソンとしてのスキルアップに役立ててください。
アイスブレイクはなぜ必要?3つのメリットを解説!
商談でアイスブレイクを挟むことにより、会話を進めやすくなるなどのメリットがあります。以下に、アイスブレイクのメリット3つをご紹介します。
【メリット1】リラックス効果・緊張をほぐす
氷(アイス)を砕く(ブレイク)という名の通り、アイスブレイクには緊張した関係性をほぐす効果があります。緊張したままではお互い会話が耳に入らなかったり、課題を抱えた顧客の本音が引き出せません。
【メリット2】顧客の警戒を解く・本音を引き出す
アイスブレイクでリラックスしたことにより、警戒が解けた顧客からは本音をひきだせるようになります。セールスパーソンと顧客、両者の緊張が解けることで「会話」自体が弾みやすくなり、双方向性のあるコミュニケーションが期待できます。
【メリット3】顧客の能動的な会話参加を促す
商談の場では「顧客の抱える課題」を突き止めるため、ヒアリングが大切です。そのため、セールスパーソンばかり話している状態は理想的とはいえません。そのような「顧客が話せない状態」をなくし、双方向コミュニケーションを成り立たせられればヒアリングの成果が高まり、顧客の課題解決につなげることができます。
商談にアイスブレイクを入れる効果的なタイミングとは?
アイスブレイクをおこなうタイミングは、基本的に商談が始まってすぐです。
ただ、場合に応じて挟んでみることも大切。それは、もし期待していない方向へ会話が進んだでしまった際などに、空気を変える手段としても有用であるためです。
やみくもに「まずアイスブレイクしなければ」と焦ったり思考停止してしまうことを避け、経験を積み「どんな時に必要なのか」という判断力を養い、効果的にアイスブレイクがおこないましょう。
オンライン商談の場合はいつアイスブレイクを入れるべき?
オンライン商談では、通常の対面式商談と比べて「名刺交換」のような時間を設置しづらくなります、そのため、セールスパーソン自身が積極的に冒頭のアイスブレイクを設けることも一つの手段です。
ただ、「相手がスピード感を重視している雰囲気である場合」「ビデオ会議ツールに時間制限がある場合」などは冒頭のアイスブレイクを避け、結論から話すように心がけましょう。
オンライン商談は「話を聞いているだけ」という状態が続くと集中力も途切れがちになってしまいます。事前に「説明に時間を多く割く必要がある」など解っている場合などもアイスブレイクを後回しにしたり、途中に入れるべきでしょう。
もし雑談が足りなかったな、と判断される場合は、商談後の「仕事感」が消えた時間に「率直に言って、こういう商品・サービスってどう思いますか?」と自社について聞いてみることで、気分がほぐれるだけでなく、今後に役立つ情報が得られるでしょう。
また、オンライン商談におけるテクニックとして、下記で紹介するアイスブレイク向け話題のうち「天気」「地域(周辺環境)」は避ける、というものがあります。理由は、遠隔地にいる相手の場合、感覚や心理状況が共有できず「共感」に結びつかないためです。
アイスブレイクにふさわしい話題4種を紹介!
アイスブレイクの会話中に話題とすることで、話が盛り上がりやすい「王道」なジャンルがいくつか存在します。
このジャンルを覚えておくことで、アイスブレイクが必要な場面で話題に欠くことなく、状況を有利に進められるようになるでしょう。
本章では、アイスブレイク時の話題としてふさわしいジャンル4種をご紹介します。
【話題1】キドニタテカケシ衣食住(覚え方:木戸に立てかけし衣食住)
「アイスブレイクの鉄板」とされている11種の話題が存在します。こちらは、覚えやすいように各話題の頭文字を取り「キドニタテカケシ衣食住(=木戸に立てかけし衣食住)」と呼ばれることが多いです。
以下の表でひとつずつ解説します。
頭文字 | 話題 |
キ | 季節 |
ド | 道楽・趣味 |
ニ | ニュース=時事・業界のホットトピック |
タ | たび(旅行) |
テ | 天気・気候 |
カ | 家族・家庭 ※【避けるべき話題】の章も参照……プライベートに踏み込みすぎないよう注意 |
ケ | 健康 |
シ | 仕事 |
衣 | 衣=服などファッション |
食 | 好きな「食べ物」など |
住 | 住まい・出身地など |
上記の話題で、うまく顧客との共通点を見つけ出しましょう。
【話題2】地域
もし自分が営業先に足を運んだ場合であれば、まさに今訪れた場所の話題を出してみるべきです。
相手が個人であれ企業であれ、居を構えた場所についてはセールスパーソンより詳しいため、何かしらの情報が引き出しやすく、盛り上がりに繋げられる可能性が高いためです。
聞き方としては例えば「この後夕ご飯を食べていく予定なのですが、おすすめの店はありますか?」など。特産品などがある地方であれば、顧客が「地元に興味を持たれている」と感じて好感を持ってくれる可能性があるため、聞かない手はないでしょう。
【話題3】顧客自身を褒める・業界について
褒められて嫌な思いをする人はあまりいません。相手の「見習いたい部分」や「持ち物」など、素直にいいと思った部分を褒めてみることもアイスブレイクの定番です。
あからさまに無理して褒めていることが相手に伝わると、かえって逆効果です。無理が出ないように、スーツの銘柄や相手の丁寧な所作など、自分も興味を持てる点を探すことがポイント。
また自分が得意な話題のジャンルを広げておくことで、自然に話題を切り出すことができます。一番効果的かつ簡単なジャンル探しの方法としては、相手が属す業界の研究をして、事前に情報を仕入れておくことです。
【話題4】プライベートについて
【話題1】の定番な話題を利用することで、プライベートの話題へ自然に移ることもできます。季節の変わり目や連休など、話題にしやすい事柄を利用して、「どのように過ごすか」など聞くことで相手との共通点が見つかるかも知れません。
ただ次章【避けるべき話題】でも解説しますが、相手を不快にさせる可能性もあるため、あまりにプライベートへ踏み込みすぎることは避けましょう。
アイスブレイクで避けるべき話題3種を紹介!
アイスブレイクで定番とされている話題には、多くのジャンルがあることがわかりました。
しかし決して「何を話しても良い」というわけではありません。
そこで本章では「アイスブレイク時に話すべきではない」3つの話題を紹介します。
【避けるべき話題1】顧客が興味なさそうな話題・愚痴や不満
そもそも一般的な会話で重視すべきことは「相手が話したいと思える話題」「相手が話しやすい話題」です。
初対面で、相手の趣味嗜好もわからない段階であれば、どんな話題が「当たり」「外れ」なのかもわからない状態です。例えば、時事的なニュースについて、知ってて当たり前のように話してしまったら、相手は一切知らなかった場合など。
同様に、相手が自分と同じような部署・役職であるということを事前に把握していた場合。「この話題は『あるある』だろう」と共感を狙って「仕事への愚痴」を話すこともやめておきましょう。
「愚痴をこぼす人」というレッテルを自分に貼ってしまい、信用を落としかねないためです。相手が「自分の会社のことも、同じように外ではけなしているのかもしれない」と思ってしまったら終わりです。
「相手があまり気乗りしていない話題をふってしまった」といった判断は早めにおこない、他の「定番話題」に切り替えていきましょう。
【避けるべき話題2】意見が分かれそうな話題
人によって意見が分かれそうな話題で、相手と逆の意見を持つ立場であることがわかってしまうと以降の会話がぎこちなくなってしまいます。そのため、多様な意見があっても自然だと考えられる分野の話題は避けましょう。
例えば、政治・学歴・宗教・芸能界の話題など。左記ジャンルは非常に意見がわかれやすいため注意すべきです。
【避けるべき話題3】プライベートに踏み込みすぎる話題
アイスブレイクにふさわしい話題の章【話題4】でも触れたように、相手のプライベートに踏み込みすぎる話題は避けましょう。
避けたいのは特に以下のような内容です。
- 年齢
- 性別
- 身体的な特徴
- 家族
- 人間関係・交際関係
- 性的な話題
※性的な話題は、「ふさわしい話題」の章【話題1】にある「木戸に立てかけし衣食住」の中に含まれた形で紹介されることもありますが避けておきましょう。
アイスブレイクをもっと効果的に商談で活用するための6つのコツ!
アイスブレイクの効果を最大限に発揮するために、知っておきたい6つのコツを紹介します。ぜひアイスブレイクをマスターして、後の商談が円滑に進むように取り組んでみてください。
【コツ1】顧客と共通点がありそうな話題を選ぼう!
これまでの章で解説した、アイスブレイクで取り扱うべき話題は、利用することで相手との共通点を見つけるために役立ちます。共通点を探るべき理由は、人間同士が共通点のある相手に親近感をいだきやすいためです。
また、お互いが知っている話題だと自然に会話が盛り上がります。
共通点が見つけられそうになく、会話に華が咲かないようであれば話題転換を意識しましょう。
【コツ2】日頃から商談相手の業界研究など新鮮な情報を仕入れよう!
アイスブレイクでふさわしい話題の章【話題3】でも取り上げたように、相手の業界について日頃から情報収集をしておくことも会話を盛り上げるためのコツ。
もともと業界研究はヒアリングのため必須と言えます。その際、意識して業界ごとに存在する「あるある」を見つけられれば、相手の課題が何かがより導きやすくなるなどアイスブレイクの効果をより強くできます。
もし自社資料として同業他社の事例があればそちらを参考に、日頃から業界専門誌のWeb版、企業HP、プレスリリースなどに目を通す習慣をつけてニュースを仕入れておきましょう。
一度仕入れた情報は、同じ業界の顧客を相手にする時「引き出し」としてまた何回も活用できます。
常に情報収集を心がけることで、ナレッジが蓄積されます。知識を話題として活用する営業ノウハウが自然と身につくようになるでしょう。
「何の情報収集をすべきかわからない」「相手の業界について調べたが、それだけでは不安」という場合は、まず【話題1】「木戸に立てかけし衣食住」の話題どれについても話せるかどうか、練習してみてください。
【コツ3】トップセールスのアイスブレイクを参考にして、真似しよう!
もし自分の所属している部署にトップセールスと呼ばれる人がいるならば、どのようにアイスブレイクをおこなっているのかを聞いてみましょう。同じ商材を取り扱っているのであれば、参考にできる部分は多いはずです。
またトップセールスの中には、初訪時のアイスブレイクを一切しない人もいます。
アイスブレイクをしないメリットとしては「必ずしも盛り上がるとは限らない」「むしろ空気を気まずくしてしまうような可能性がゼロでは決して無い」ためなどが挙げられます。そういったリスクが商談の結果を危うくすると判断できるのであれば、避けることもひとつの手段といえます。
あるいは「顧客はきっとこういうことで悩んでいるのではないか」と顧客の持つ課題に当たりをつける「仮設設定」を事前準備として十分にできている場合は、アイスブレイクを挟まずとも顧客の興味をひきつけられます。もし顧客の悩みを見事に指摘することができれば、商談後はむしろ相手の方から話をふってくれるようになります。
【コツ4】意識して商談後に雑談しよう!
【オンライン商談】の章でも触れましたが、意図的に「商談後」のアイスブレイクを取り入れるとお互いの理解を深められます。もし商談前のアイスブレイクがうまくいかなかった場合のリカバリーも期待できます。
もし自社商材や営業スタイルについての率直な感想が聞ければ、今後のセールスに役立ちます。また、商談後に相手が話を提示してくれるかどうかで、自分自身や商材にどれほど興味を持ってくれているかを推し量ることもできます。
【コツ5】アイスブレイクを入れるか入れないかは顧客の様子を見て判断しよう!
【コツ3】【コツ4】にもあるように、アイスブレイクは絶対にしなければならないわけでもなければ、必ず商談前にしなければならないこともありません。
例えば相手の振る舞いから、商談を「単に作業のひとつでしかない」と捉えている様子や、雑談が得意/好きではなさそうな様子、急いでいる様子などが察せられるのであれば、下手に雑談を挟まないほうが好感をいだかれる可能性もあります。
このように、むしろアイスブレイクをしようとする行為そのものがマイナスにはたらいてしまうこともあるため、アイスブレイクをするかどうかの状況判断ができる視野を養うことも重要です。
【コツ6】アイスブレイクは5〜10分に収めるようにしよう!
アイスブレイクは5~10分で終わらせるようにしましょう。仮に雑談が盛り上がってしまったからといっていつまでも話していたのであれば相手の貴重な時間を奪うことになり、結果的に信頼を失ってしまいます。
アイスブレイクがうまく行ったからといって熱中してしまい、本題での集中が途切れてしまっては本末転倒です。アイスブレイクは目的ではなく手段のひとつであり、商談のメインではありません。時間間隔がつかめないオンライン商談の場合は特に気をつけましょう。
もちろん【コツ5】のように急いでいる相手に短時間であろうとアイスブレイクを持ちかける行為は問題外です。
アイスブレイクは相手の立場や状態を見極め、状況に応じた話題を提供することが大切!
商談は初対面の相手とおこなうことが多いため、お互いの緊張した空気を解きほぐし、その後の会話を円滑にするアイスブレイクは非常に便利です。
アイスブレイクの際に取り扱うべき話題やタイミングはある程度決まったパターンがありますが、毎回同じセオリー通りに事が進むわけではありません。
相手の様子を注意深く観察し、話すべき話題をしっかり選別しましょう。時にはアイスブレイク自体を必要としないケースもあることに注意です。
アイスブレイクはあくまで「商談を円滑にすすめるための一つの手段」であるため、アイスブレイク自体を目的としてしまわないようにしてください。アイスブレイクが上手くいくかどうかに一喜一憂せず、商談の目的がぶれてしまわないように気をつけましょう。
アイスブレイクのコツが理解できたら、自分の中に落とし込めるように社内ロールプレイングなどで実践してみてください。実際に対人で練習することで、自分にはどんなアイスブレイクのやり方が合っているのかが判明したり、練習相手からフィードバックを受けることによる内容のアップデートが期待できます。
どんなパターンにも対応できるように、練習や本番の回数をこなし、商談を成功に導きましょう。