営業で断られた時の返事はどうすべき?うまい切り返し方を解説!

営業活動をしていて、いざ商談にこぎつけても「お断り」を受けてしまうと怯んでしまうことは多いはずです。

相手からの「お断り」はセールスパーソンにとって大きな壁となるイメージがありますが、実は対処法があります。

そこで今回は、営業で「お断り」を受けてしまった際の切り返し方法や会話フローについてご紹介します。

さらに、そもそも「お断り」を起こさせないための脳科学的アプローチ方法についても解説します。

簡単に真似できる内容となっていますので、ぜひ実践してみてください。

【監修者】 小沼 勢矢

【監修者】 小沼 勢矢

一般社団法人プロセールス協会 代表理事
中小企業サポートネットワーク「スモールサン」YOKOHAMAプロデューサー

脳科学の権威である石川大雅に師事し、40年間3万人以上の成功者の脳と向き合い確立して来た「実証的脳科学」を提供するプロ・アライブ社を承継。2代目経営者となり組織開発や人材教育の場数を踏み、8年で3,500人以上のクライアントに指導してきた実績を持つ。コロナ禍で営業に課題を抱えるクライアントが増加したことをきっかけに成約率80%を達成するための脳科学を基にしたセールスメソッドを確立。価値あるサービスを世の中に上手く届けられずに困っている事業者様を支援したいという想いから、一般社団法人プロセールス協会を設立。セミナー・コンサルティング・会員サービスなどの提供を行う。

営業で断られた時の返事は「共感」と「深掘り」が重要!

基本的なマインドは、お断りを入れてきた相手への「共感」と、お断りに至った理由に対しての「深堀り」を意識しておくことと覚えてください。

共感は「クッション言葉」、深堀りは「ポジティブ質問」に置き換えることが可能です。

共感が重要な理由は、たとえお断りであっても「顧客がリアクションを起こしてくれたこと」に対しては感謝すべきだからです。

さらに顧客自身が断ったことで、こちらの意図を汲んでやれなかったという「後ろめたさ」「不安」を抱いている場合もあり、その不安を和らげてその後に繋げる必要があるためです。

そのため、積極的に発言するのが得意ではなさそうな相手の場合、「あまり欲しいと感じなければ、ぜひ断ってください」と先に伝え、お互いの時間を節約し、次のフローへとつなげることも一考すべきです。

「深堀り」は、基本的に共感のあとに行います。

断った顧客に共感の意を示すことで、顧客はいくらか安心することになります。

安心した状態なら、「どうしてお断りに至ったのか」という詳細な理由について話してくれるかもしれません。

このため、共感後のタイミングでの深堀りが重要になります。

この深堀りによって、実は顧客にとって「説得しづらい上司がいる」「本当に予算がギリギリな状態である」といったことが発覚するかもしれません。

深堀りは貴重なヒアリングの機会であり、今後に活かすチャンスを見つけられる時間でもあります。

営業で断られた時の返事で使える基本フロー

本章では、実際に営業中にお断りされた場合に実践して使える手段について紹介します。

基本的に以下の順番でお話を進めることをおすすめします。

断りを承知し、理由に対して共感する
時間をとってくれたことに対して感謝を伝える
断った理由について「ポジティブ質問」で深掘りする
今後に繋げる提案やお願いをする

上記のようなフローを概略として頭の片隅に覚えておくだけでも、いざという時にアドリブで行動が起こせるようになるので、ぜひ意識してみてください。

以下からは、各フローの詳細について解説します。

1、断りを承知し、理由に対して共感する

営業中にお断りされた場合、まず「クッション言葉」で相手の意思を受け止め、共感しましょう。

例えば「率直におっしゃっていただき、ありがとうございます」「正直にご意見をお伝えいただき、ありがとうございます」などです。

この時点ではまだ、「どうしてそのように(コストが高い、気が進まない)思われましたか」と聞いてはいけません。

脳科学的には、もし上記のように聞いてしまうと、相手はこちらの反応を「防御反応」と捉え、共感されているとは感じなくなってしまうためです。

クッション言葉で共感を与えることで「心理的安全基地(ラポール)」を形成することができます。

何を提案するにも、この心理的安全基地が作れなければ、相手が本音を話してくれる状態にまずなりません。

2、時間をとってくれたことに対して感謝を伝える

相手は一度は「お断り」という結果を出してしまいましたが、セールスパーソンのために時間を捻出してくれたことは事実です。

このため、相手の貴重な時間をいただいたことに対して感謝の意を述べましょう。

ここで相手の気持ちや行動を考慮せず、感情的な言葉を話したりそっけない態度をとってしまってはすべてが台無しです。

この後のフローで最終的に完全に断られてしまったとしても、相手の行動に対する感謝を態度で示しておくことで好印象のまま相手の記憶に残ることができます。

顧客も、良い印象を抱いた相手とは、今後の展開に前向きになれます。

3、断った理由について「ポジティブ質問」で深掘りする

クッション言葉で相手の断りに対して共感し、謝意を述べたあとは「ポジティブ質問」を使います。

ポジティブ質問とは、「相手に『ポジティブな内容で返させる』ための質問」のことです。

もしお断りを受けた場合、こちらを即座に返す瞬発力が必要となります。

なぜポジティブな返しを相手にさせるかというと、相手が断る理由とは「ネガティブな情報」であり、脳科学的にはネガティブな情報がセールスパーソンの耳に入るとその情報に自分が洗脳されてしまうためです。

心のどこかに、「確かにこういう理由なら断られてもしかたない」という思いが生まれてしまいます。

例えばコストが高いと言われた場合なら「率直におっしゃっていただき、ありがとうございます。この価格の理由についてお伝えしてもよろしいでしょうか?」となります。

もしそこで相手が「Yes(価格の理由を話してみてください)」を提示した場合、商談を継続する意思があるということになります。

つまりその場にはポジティブな空気が流れています。

こちらが価格が高い理由を提示し、また新たな反応が顧客からある場合、他に顧客の中でネックとなっている問題が明るみにできることでしょう。

仮に相手がポジティブ質問にも反応してくれず、取り付く島もない場合であれば、一度諦めてメモ帳などを用意し「断った理由」についてこちらが率直に聞いてしまうという手もあります。

自分の職務について真面目な姿勢をアピールできれば、今後の付き合いに好影響を及ぼせるかもしれません。

ただ基本的にはネガティブな空気を作らず、ポジティブ質問を活用してみてください。

さらに営業トークとして活用できる、より突っ込んだ技術「応酬話法」についてはこちらをご覧ください。

4、今後に繋げる提案やお願いをする

完全に断られてしまった場合、同業他社で似た課題を抱えていそうな方を紹介してもらうという方法もあります。

ただ、場の空気が相当明るく、相手も話好きそうな場合や、相手がはっきり後ろめたく思っている場合など、好条件なときだけにとどめておきましょう。

無理に引き下がって「断った営業から『他の会社紹介しろ』とか言われたよ」と業界内に広められてしまったら、あなたの企業の名声が下がります。

上記のような紹介営業は、成約後にアフターサポートやカスタマーサクセスを通じて信頼を深めた相手が自発的に導いてくれるものであるため、本ケースは例外中の例外とし、あくまで相手次第と理解しておくべきでしょう。

デキる営業マンは深掘りがうまい!顧客に合わせた切り返しをして再提案に繋げよう!

商談の場で「お断り」を経験してしまうと、メンタル的にその後のフォローがしずらくなってしまうセールスパーソンは多いと思います。

しかし、断られてからも勝機を見出すことは可能です。トップセールスの人々は、断られてからが勝負と思っている人もいます。

営業の場で想定されるお断り文句には、それぞれ決まった切り返し方があり、うまく相手に刺されば再提案に繋がります。

そこでぜひ次章からの「切り返し方」を身に着け、営業活動に取り入れてみてください。

【理由別】営業で断られた時のうまい切り返し方

本章では「営業で断られる際の代表的な理由5つ」について紹介し、それぞれに対しての「切り返し」方法について例文を交えながら解説します。

冒頭で紹介した「共感」や「深堀り」のマインドを効果的に交えながら使っているので、意識しながらご覧いただければ、直感的に理解できるようになっています。

ぜひ自分が実際に受けたことのある断られ方や、この切り返し方を知っておきたいなと思ったものを、ぜひ今後のセールストーク改善などにご活用ください。

理由1:「必要ない」

商談中に相手からこちらの商材を「必要ない」と言われてしまったら、まず以下のように共感をしましょう。

  • 「確かに、市場にある他社商品などを取り入れていらっしゃらないのも、現在は必要ではないと感じていらっしゃるからですよね」

共感により相手の緊張がほぐれることで、必要ないと思う理由を話し始めることがあります。

その際、相手から理由がスラスラと出てきた場合、その分野の商材は本当に必要がない可能性が高いです。

そうではなく、何か言葉を濁したり話題転換を図っているような場合は、顧客の中でその商材が持つ価値や自分のニーズが自覚できていない可能性があります。

はじめに述べたこととは異なる角度から商材についての魅力を伝えることができれば、興味を引き付けられるかもしれません。

理由2:「忙しい」

相手に「忙しい」からとセールスを断られたら、相手の業績を褒める以下のような切り返しが有効です。

  • 「確かに、業績を伸ばされていて(上場されて)お忙しいはずですよね」

この場合、事前に入念なリサーチが必要です。相手がなぜ忙しいのか把握せず、的はずれなことを言ってしまってはさらに信頼を落とすだけです。

しかしながら、本当に忙しくてセールスの相手なんてしていられないという場合も大いにありえるため、今後につなげるためにも深追いは避けておきましょう。

相手が断る理由に忙しさを見せるケースは、以下の3つのケースに分類されます。

  • マニュアルで忙しい断ることになっている場合
  • 本当に忙しい場合
  • 自社の課題を自覚できていない場合

このため、以下のようなフローで対応するとよいでしょう。

相手「ちょっと今忙しくて…..」
→「本当に必要ないとご判断されたら、いつでも断っていただいて大丈夫です
ニーズや課題解決について説明
相手「申し訳ないんだけど、忙しいからまた今度にしてもらえる?」
→「また改めてお話しできればと思いますので、後日でお時間が取れる日はありますでしょうか」
相手方が本当に忙しいわけではなく、断り文句として「忙しい」と言っている場合は「少しお尋ねしたいのですが」などのクッション言葉を挟んでから、改めて課題やニーズを探るヒアリングに入る
(例)「~~といった悩みはございませんか?」
課題を引き出せたら、自社商材につなげる

理由3:「費用が高い」

費用を理由に断られてしまった場合もまず共感の意を見せながら切り返します。

例えば「これまで利用していなかったジャンルの商材だと思うので、急にそこに割くための予算をこの場で捻出することは難しいですよね」といった言い方です。

予算が足りないことについては以下の3つのケースが考えられます。

  • 本当に予算がない
  • 予算はあるが急に捻出することができない
  • 優先度が低いと判断した

予算があるケースについては、こちらがオプション等を差し引いて割引可能である旨を伝えたり、「導入しないことでこういった事態が実際に起こってしまった他社事例がある」といったリスクマネジメントの角度から緊急性を煽ることもできます。

理由4:「決定権がない」

営業で対面した担当者が「商材を導入していいかどうか私一人では決められません」など、決定権がないことを理由に断られる場合もあります。

決定権がないことを理由に断られた場合、「なるほど」と理解して共感した上で「もしあなた自身に決定権があった場合なら、必要だと(契約に至りたいと)感じますか?」と本音を引き出すことを意識しましょう。

担当者の本音を引き出すことで、展開が以下のように変わるためです。

担当者は必要性を感じているが、「決裁権を持つキーパーソンが納得しなさそうだ」と捉えている場合キーパーソンはどういった考え方で結論に至っているのかをヒアリングして、「どのようにキーパーソンを説得すべきか」についてアドバイスする。
担当者自身も商材を導入する必要性は感じていない場合再度ヒアリング。課題やニーズを引き出し、自社商材に結び付けられないか検討、無理なら引き下がる。

担当者が「自分は商材の必要性をPRする実力を持ち合わせていない」と捉えている場合、たとえ必要だと思っていてもキーパーソンを説得するための時間が無駄になることはわかっているため、下手に上役の機嫌を損ねるわけにも行かず非常に消極的になります。

そこで鍵となるのはセールスパーソンが「担当者に足りていない自信」補うことができるかどうかです。

過去、これまでにキーパーソンがどのように決裁してきたかなど出方をヒアリングした上で、説得の方法をいくつか提示してみると、提示したいずれかに勝機を見出してくれるかもしれません。

もう一つのパターンで、担当者が明確に必要でない理由を打ち出して来た場合、商談を終わらせることがベターです。

相手が充分に商材を理解できていないと感じることができれば、再度ヒアリングにチャレンジしてみるのも手でしょう。

理由5:「すでに他社と契約している」

商材を紹介したら、担当者に「すでに同じような商品を他社と契約している」と言われて断られてしまった場合について考えます。

この際に示す共感の方法は「確かに、すでに◯◯社さんとお付き合いがあるなら問題ありませんね」などです。

ここから切り返す方法は以下のような聞き方がいいでしょう。

  • 「◯◯社さんとお付き合いを初めて以降、どのように変わったかお伺いしてもいいでしょうか?」

もし「◯◯社に満足している」と回答された場合は、参考モデルにできます。

貴重な顧客の生の声として自社に持ち帰り、今後の課題としましょう。

あるいは他社製品に不満があることが分かった場合は、その不満を自社商品なら解決できることをアピールしてください。

不満を把握できた瞬間から、ヒアリングモードに切り替えることがポイントです。

理由6:「理由には納得したが、契約は結構だ」

セールスパーソンの説明に対して、顧客が満足してしまうことが多々あります。

満足した状態の顧客は「本日はご説明に納得しましたが、今回は見送らせていただきます」といったお断りを示します。

脳科学的に解説すると、上記のような場合、顧客の中で「心理的完了」状態となってしまっている可能性が高く、セールスパーソンはあらかじめ「完了」を起こさないようにするための行動が必要となります。

顧客に心理的完了を起こさない、つまり「心理的未完了」状態で理想的にクロージングを迎える方法とは「満足させないセールス」です。

「満足させなければ成約に至らないじゃないか」と思われるかもしれませんが、「満足させない」ことの本質的な意図は「次のことが聞きたくなる、知りたくなる」といった心理状態を顧客に起こさせることにあります。

例えばコンサルティングやコーチングの立場からサービスを提供する場合、営業の段階で相手が抱えた課題への対処方法としてすべてを説明してしまうことはありません。

それは無料でコンサルをしてしまうのと同義であるためです。

このように、相手を満足させたいがために手の内をすべて明らかに話してしまう行為を避けたセールスが営業の現場では必要となります。

本項の手段を用いて、顧客が興味を示した場合「もしこの先がお知りになりたいという場合、商品説明に移りたいと思いますがよろしいでしょうか?」とクロージングへとつなげることが可能になります。

さらに進んで、脳科学的な手法「ステップ」「コード」を効果的に用いた心理的未完了の起こし方について知りたい方は、こちらをご覧ください。

営業は断られてからが勝負!基本をマスターして切り返しスキルを高めよう!

今回は営業中にお断りを受けてしまった場合の対処法についてご紹介しました。

まずは断られても慌てないことです。相手の言葉を否定したり、無理に引き下がることは厳禁であると意識しましょう。

落ち着いて相手の言葉に共感し、相手の心も安定させてから深堀りすることで、改めてヒアリングの機会や勝機を見出します。

また「定番のお断り文句」に対する切り返し方も存在します。商談テクニックの基本事項としてトークスクリプトに取り入れるなどして、いつでも引き出せるように意識すれば自信につながります。

さらに「お断り」をそもそも発生させないように促す、脳科学的な会話誘導の方法もあります。ぜひ基本フローから状況に合った方法を取り入れてみてください。

本文に挙げた例や脳科学的アプローチの方法は、非常に簡単に真似できるものばかりですので、ぜひご自身の明日からのセールス活動に取り入れ、実践してみてください。