すべての商談を必ず成功に導けるセールスパーソンはいません。
営業に配属されてはじめの頃は、失敗して当然、失敗から学べ、と言われることでしょう。
経験に裏打ちされたセンスや熱量で、商談を切り抜けるトップセールスもいます。
売れている人の真似をすれば、事実上同じ高みには行けるはずです。
しかしながら、すぐさまその全てを真似することは難しく、誰しもが長い間失敗を繰り返すことになります。
さらに昨今ではオンライン商談という方法もごく身近なものとなりました。
オンライン商談は世間に浸透し始めて間もないツールともいえるため、ノウハウが確立されていない現状といえます。
そこで今回は、対面商談・オンライン商談における失敗原因とその対策について解説します。
【対面編】商談が失敗する代表的な原因2つ
まず、対面商談でありがちな商談失敗の理由について2つ紹介します。
【原因1】喋りすぎ
商談を失敗に導いてしまう理由のひとつは、セールスパーソン自身が喋りすぎることです。
商談では相手、つまり顧客がどのような課題を抱えているかをはっきりさせることが必要です。
そしてその課題が、自社の商品やサービスでどのように解決できるのか、を理解していただくことで初めて自社に興味を持ってもらえます。
上記のような手順も踏まずに、「自社製品のことならば知り尽くしているから」といつまでもひとりで会話の主導権を独占していたのでは、必ず商談が失敗してしまいます。
【原因2】盛り上がらない・相手の警戒心がとけない
喋りすぎとも似ていますが、対面の商談が失敗してしまう理由として「会話が盛り上がらない」も挙げられます。
喋りすぎが受け入れられない理由も、会話が盛り上がらない理由も、「まだそうすべきではない」ためです。
つまり、「会話」自体を楽しむ心情に相手がまだなっていないと考えられます。
商談において相手側は、何をしにきたのかもわからない、真意のかけらも伝わっていないセールスパーソンに対してまだ警戒心を抱いています。
段階としては、まずこの警戒心を解かなければなりません。
一方的に会話を始める時期でもなければ、会話が盛り上げられる段階でもないのです。
【オンライン編】商談が失敗する原因6つ
続いて昨今のセールス活動において必須メディアともなりつつある、オンライン商談における失敗原因について6つ紹介します。
オンライン商談では、相手に開示する情報は対面に比べてごく少数です。
ごく少数の情報しか見せなくていいから簡単、とはいきません。
オンライン商談では、致命的な準備不足が失敗につながってしまうケースが多くなります。
【原因1】「見られている状態」への意識が足りない
オンライン商談を失敗に導いてしまう原因のひとつに、見た目、つまり「カメラに自分側がどう映るか」についての配慮が足りていないことが挙げられます。
例えば「PC操作には十分な光量がある」と判断できる部屋で通話をしていると自分は意識していても、相手からはかなり顔の影が暗く見えてしまっている場合があるかも知れません。
相手にとっては「通話している人間の顔が見れなくなっている状態」であり、これではやはり対面商談のように警戒を解くことができません。
リモートワークが広まるにつれて、オフィスカジュアルでのビデオ会議へ臨むことへのハードルは下がりつつあります。
しかし逆に男性であれば無精髭が、女性であれば化粧についてがより目立つようになったとも言われています。
このように服装はよくても、ビデオ通話の画面に映る部分が意識できていないセールスパーソンは意外と多いです。
ここで「オンライン商談で相手に必ず見える部分」だけに気を遣えばいいのだと思われるかも知れません。
上記の考えだと、極端に言えばビデオに映らない部分が散らかっていたり、お子さんがおられる方であれば同じ部屋にいる状態で通話を始めるということもあり得るでしょう。
その場合、環境音により商談が中断する恐れがあります。
ほかにも「見せ方」で言えば、商談で扱う資料についても同じことが言えます。
以前の対面商談やセミナーなどのために作成した資料をビデオ通話の画面共有で流用した際に、文字や図が小さすぎて何もわからないということがあります。
このように、相手にとってどう見えるかが意識できていないことが商談の失敗する確率を大きく上げる要因となります。
【原因2】通話にふさわしい環境が整っていない
商談を妨げる環境音について前項でも触れましたが、周りに誰か喋っている人がいたり、工事中の音などが入ってしまう場所はオンライン商談に向いていないと言えます。
ただでさえオンライン商談では、対面に比べて視覚や聴覚が研ぎ澄まされている状態です。
そこで発生してしまう商談に関係ない音は、商談に集中してくださっている相手の意識を削ぐことに繋がります。
また通話環境に関してだとマイクの質も障害となり得ます。
ピン留めタイプのマイクだと、上着の記事によって常にノイズが生じてしまうことなどもあります。
接続端子がしっかりとデバイスに繋がれているかどうかのチェックも欠かせません。
きちんと接続できていなければ、通話自体が不可能になります。
同時に、社内で利用しているビジネスチャットツールなどの通知も相手の信頼を失い、商談を失敗させる要因となります。
資料共有の際、ビデオ通話画面に写り込んでしまい、場合によっては社内の機密情報が漏れてしまう恐れがあります。
また顧客からは「社内の情報をこんなに簡単に露出させてしまう人なら、当社の弱みや課題といった重要な情報も簡単に外部に漏らしてしまうのではないか」と信用を落とすきっかけとして受け取られます。
さらには文字通り「ノイズ」として顧客の脳に残ってしまい、商品についての理解を深められない一因ともなります。
【原因3】信頼が構築できていない
【対面編】における商談失敗要因とも共通する部分がありますが、顧客との信頼関係が構築できず、失敗につながってしまうことがあります。
オンライン商談はオンライン独特の雰囲気があります。
お互いの環境を調整し、話すためのセッティングをして一旦落ち着くことで、しんと緊張した空気のまま本題に入ってしまうこともあります。
対面商談のようにアイスブレイクがないと、なかなか相手の信頼を勝ち取ることはできません。
またオンライン状態では五感の優位性がリアルと著しく異なります。
このため、相手の心情や雰囲気を読み取ることに長けたトップセールスでも正確に子役の感情を把握することはほぼできません。
【原因4】リアクション不足
前項でも紹介しましたが、オンライン商談では五感の優位性が対面状態と大きく異なります。
このため、特に視覚的にはリアクションが会話を発展させるために必要です。
残念ながら普通に相槌を打っていただけでは相手の懐に切り込むことができません。
よって、セールスパーソンが打っても響かないようなリアクションをしていると、自ずと会話が盛り上がらずに失敗してしまいます。
リアクション不足な状態とは、具体的には以下のような行動を伴ってしまうと起こりがちになります。
・口で相槌を打っても体を動かさない、じっとしたまま
・相手にビデオONを促していない(感情を読み取りづらくなるため)
・スマートフォンに来た通知を見る、デュアルモニタに目を向けてしまうなど集中していない様を見せてしまう
【原因5】相手の準備不足
オンライン商談では、商談を主催する側のビジネスパーソン自身が入念に準備を行っておくべきということはこれまでの項目でも理解していただけたと思います。
さらに相手側、つまり顧客がもともと準備不足で、そもそも商談に臨めず失敗というパターンも考えられます。
そこで相手側の準備についてもできる限りサポートを行うべきです。
理由としては、顧客が必ずしも自分たちと同じPCスキルやネットリテラシーを持っているとは限らないためです。
商談相手が当日必ずWebカメラに自分の体を映し、マイクで話せるかどうかはわかりません。
オンライン商談を開催するに当たって、まずはお互いの足並みを最低限揃えたいところです。
【原因6】フォロー不足
仮にオンライン商談が程よく盛り上がったとしても、その後のフォローを怠ってしまうと「あの時の熱量はどこへ消え去ってしまったんだろう?」という対応をされてしまうこともあります。
オンライン商談は通話が終わったら「案件が全てが終わった」わけではありません。
打てる手段を全部打って、顧客との関係性の持続に努めていきたいところです。
【対面・オンライン編】商談の失敗を防ぐ対策方法4つ
これまで対面商談・オンライン商談における失敗の理由について紹介しました。
そこで本章からは、商談の失敗を起こさないように、対面商談・オンライン商談それぞれの失敗原因を事前に防ぐ方法について解説します。
【対策1】警戒心の解除
商談を成功に導くコツとして挙げられることは、相手の警戒心を解除することです。
【対面編】における失敗原因2つ「喋りすぎ」「警戒心を持たれ、盛り上がらない」の解決にもつながります。
もちろん警戒心の解除はオンライン商談においても必要です。
こちらはオンライン商談が失敗してしまう【原因3】である「信頼関係が構築できていない」の解決にもつながります。
1:アイスブレイクでラポール形成
警戒感を解除するためには、まずアイスブレイクとなる一言が必要です。
とりわけ「今回の商談のために時間を作っていただいたこと」についての謝辞を述べると良いでしょう。
ほかアイスブレイク特集の記事もご覧ください。
アイスブレイクでは、いきなり本題には入らないことがコツです。
仮に相手が見るからに困っている、課題を抱えている状態だとわかっていてもすぐにヒアリングを始めてしまうなどはNGです。
特にオンライン商談【原因3】でも挙げたとおり、通信環境のチェックを終えて安心し、いきなり本番の会話に入ってしまうなどもありがちなので気をつけてください。
どんなに素晴らしい商材があるということがわかっていても、相手は初対面であるセールスパーソンに対して不安や恐怖を抱いています。
具体的には「この人はどんな人なんだろう、高いものばかり売りつけられないだろうか。性格はどんなだろう……」といったことです。
まずこの不安や恐怖をなくし、ラポール(心理的安全基地)を形成しなければなりません。
2:商談中は相手が発言できるように配慮を
顧客の警戒心を解くために、商談中は顧客の様子を全神経を集中させて推し量るぐらいの努力が必要です。
トークスクリプトに基づいて話ができたら、相手がこちらの話を理解してくれているか確かめるため、ところどころで一時的に立ち止まってみましょう。
そして「ここまでで、不明な点やは質問はありますか?」「ご興味にかなったサービスはありましたか?」といった質問を投げかけて、一方的なコミュニケーションとならないように相手へ発言を促します。
一方的にべらべらとまくし立ててしまったり、マシンガントークの才能は商談ではデメリットです。
上記のような癖がある場合、ロールプレイングを入念に行い矯正する必要さえあるといえます。
本項に関して、ロールプレイングやトークスクリプトの記事もご覧いただくことで商談の質を高めることに寄与します。
3:特にオンライン商談ではプレゼン資料を見やすく
顧客の理解を深めるためには資料の作り方にも注意が必要です。
対面ならば、セールスパーソン自身が可読できる状態の資料を共有しても何ら問題はありません。
しかし画面に映して資料を共有するオンライン商談の場合は、見え方が大きく異なります。
相手がどのような大きさの画面で資料を見てくれているかはわかりません。
事前に教えてもらうことができれば対策ができるかも知れませんが、当日になって相手側の環境が変わることも十分にありえます。
そのためプレゼン資料の文字は、PowerPointでの作成を基準とした場合に「32pt以上」にしましょう。
相手側がどういった環境でも、32pt以上の文字であれば可読性が確実に高くなります。
【対策2】こちら側の環境改善・準備「仮設設定」の徹底
商談には準備が必要です。
基本的には相手企業の情報、業界の情報を事前に調べておきましょう。
さらに、オンライン商談では各種ツールを使いこなせていなければ相手の信頼を落としてしまうだけでなく、商談自体を進行させることに支障をきたしてしまいます。
オンライン商談の準備の仕方には、同じくZoomのようなビデオ会議ツールを利用したオンラインセミナー開催準備の記事を参考にしてみてください。
【対策3】でも解説しますが、見せられる範囲でマニュアル化し、相手企業に共有することで好感を得ることにもつながります。
また「見え方」も重要です。
オンライン商談の失敗【原因1】にもあったように「画面に映っていない箇所をどうするか」自体は人それぞれであり、裁量に委ねるしかないかも知れません。
一般的には、環境音などに差し支えなければいいでしょう。
ただ、例えば「上半身だけきちんとしていればいいだろう」と下半身をジャージで済ませてしまっている場合などに、急に必要な資料が足りていないことが発覚し、探しに行くことになった場合、慌てて移動して画面に映ってしまうかも知れません。
上記のような状態を見せてしまうアクシデントがあった場合、これからの時代をオンライン商談と共に生きるセールスパーソンであれば、隙を見せてしまうことで相手の心証がどうなるか?という一連の結果まで把握しておくべきです。
同様に、画面共有の機会が多いオンライン商談では、通知をすべてOFFにしましょう。
音だけでなく、「ポップアップ」や「バルーン通知」などにも社外秘項目が映りこむ可能性があるため、いずれも切ることを推奨します。
【対策3】相手環境の確認(オンライン商談)
商談を円滑にすすめるため、特にオンライン商談の場合では「商談相手がちゃんと接続できるかどうか」を事前に確認しておきたいです。
本項はオンライン商談の失敗理由【原因5】の「相手の準備不足」を解決するために有用です。
自社がある程度オンライン商談のノウハウを得た状態であるなら、オンライン商談を開催するための自社用マニュアルを作成し、今後に活用しましょう。
具体的には社内機密情報などを削除した形でオンライン会議ツールの使い方やマイク、カメラの調整方法について解説したドキュメントを作り、商談相手に共有します。
オンライン商談におけるマニュアルの作り方は、Zoomなどオンライン会議ツールの使用を想定した以下「オンラインセミナー成功に向けて」の記事に記載された【準備編】の項目を参考にしてみてください。
主なチェック項目は、各種ツールの使い方、カメラやマイク、本番用のトークスクリプト(紙に印刷して手元に)や画面共有で使う資料の格納場所の点検などです。
リハーサルと称して、事前に一度相手と本番と同環境下での通話ができれば最適です。
お互いに録画するなどして見え方、聞こえ方のチェックを行いたいところです。
また本番当日の致命的な通信エラーなどのトラブル回避のために、お互いの直通電話用の番号を交換しておきましょう。
【対策4】会話の盛り上げに、オーバーリアクションを心がける
【対策1】により相手の警戒心を解除できたら、コミュニケーションを円滑に行うことを目指しましょう。
特にオンライン商談の場合、「マイク・カメラのON」を確実にしてもらえるよう、相手を説得しておきましょう。
これは「メラビアンの法則」が対面の場合と大きく変化するためです。
メラビアンの法則によると、人間は対面時だと主に発話者の勢いや身振り手振りといった聴覚・視覚情報に影響されて相手の印象を決定づけます。
こちらがオンラインに変化した場合、基本的に相手のバストアップしか見えなくなるため、大きく視覚情報が減衰し、聴覚情報の重要性が高まります。
このため相手からの反応では常にリアクションを大きくすることを意識しましょう。
具体的には相槌で大きくうなずいたり、声のトーンを高めるなどです。
相手の音声や姿かたちが得られない場合では、意思疎通が非常に難しくなります。
ぜひ、相手にはビデオカメラをONにしてもらいましょう。
相手の状況が伺い知れない状況でのオーバーリアクションは、ギャンブル性が非常に高く危険です。
体系立てられたセールスロジックが必要(オンライン商談)
また対面商談で「熱量」や「思い」を使った話術を得意としていた「熟練者」の場合、オンライン商談ではほぼ通じなくなります。
オンライン商談では、「視覚情報の減衰」「聴覚情報の重要性」「会話の内容」を重視した会話を展開しましょう。
同時に、もし相手が会話の内容を難しく感じると、その部分がノイズとなって不信感につながってしまいます。
このためオンライン商談では再現性の高い、体系立てられたセールスロジックをノウハウとして身につけておくことが必要です。
【対策5】社内ロールプレイング
対面営業・オンライン商談いずれにも効果的な対策が「ロールプレイング」です。
ロールプレイングは、社内で経験豊富なトップセールスなどを交えながら開催すると研修効率が非常に高くなります。
ロールプレイングの実用的な部分はフィードバックにあります。
実地経験がある社員のやり方を学び、真似ることで、誰でも簡単に実力の底上げが狙えるためです。
実際に商談を再現させた形で学べるため、未経験者や新人の教育などに便利です。
【対策6】商談後のフォローアップ
対面商談・オンライン商談いずれでも、商談自体が盛り上がりクロージングまで進めたとしても、その後に何もしなかったのでは発展が途絶え、相手との関係性が潰えてしまいます。
商談後のフォローのために、当日中にさらなる参考資料の送付を行う、サンプルを使ってもらうためのユーザー登録手続きを行うなどの約束を商談中に取り付けておきましょう。
商談のアフターフォローについては「営業のプロセス別解説」記事もご覧ください。
商談が失敗してしまうことには必ず原因がある!確実に対策して成功に導こう
対面商談・オンライン商談それぞれ失敗してしまうことには原因があります。
もし自分が「失敗してしまった」と思った商談のデータがあれば、勇気を出して見返してみましょう。
ぜひ、本コラムと照らし合わせることで原因を探ってみてください。
商談の失敗は、事前や事後の対策で回避できる確率がぐっと上がります。できることから取り組み、商談を成功に導きましょう。