営業活動に苦手意識を持っているセールスパーソンは決して少なくないと思います。
総務省の調査によると、日本の2017年の労働生産性は欧米の2/3、G7加盟国の中では最下位となったとの結果が出ていることからも、個人が成果を出しづらい状況となっているようです。
「営業課に配属されたけど、初めての人とばかり話すのは苦手だ」「相手に必要かどうかわからないのに、商品を売るなんてできない」など、セールスに関する悩みは尽きません。
営業に苦手意識を持っていては、思うように結果が残せないことでしょう。
営業活動にはプロセスがあり、プロセスごとに適したコツを実践していけば結果がついてきます。
そこで今回は、セールスパーソンが営業活動で結果を残すためのコツについて解説します。
営業マンが抱えがちな課題5つ!
営業マンは自社の売上に貢献するため、毎日のように商談の場に臨みます。商談の機会が多ければ多いほど成約の可能性も高まるはずですが、同じ数だけ壁を感じる場面も増えることでしょう。
そこで、営業マンが抱えがちな5つの課題について見ていきます。
【課題1】アポイントがとれず、商談数が確保できない
そもそも商談をおこなうためには顧客とのアポイントが取れなければなりません。しかし、BtoBテレアポの成功率は1%にも満たないという調査結果があります。それだけ「アポイントを得ることは、もともと難しい」といえるでしょう。
インサイドセールス部門を設置しているかどうかにも、アポイント獲得率は左右されます。インサイドセールスはメール・電話専門のグループが潜在顧客リストに総当りで連絡するというような、数を活かした手法が取れるため、アポイント獲得に有利です。
【課題2】お客様との信頼関係がうまく構築できない
商談に来た顧客は少なからず悩みや課題を抱えた状態です。ただ自身の悩みや課題、つまり1企業の弱点ともいえるような部分を簡単に話してくれるわけはありません。
つまりセールスパーソンを「信頼に足る相手である」と思ってもらえなければ、顧客の悩みと自社商品のマッチングをPRするといった、商談のスタート地点にも立てません。
顧客の悩みや課題を「自分ごと化」するぐらいの姿勢を見せなければ、顧客の信頼は得られません。
以降に紹介する悩みも、顧客との信頼関係がうまく構築できないと起こりがちになります。
【課題3】お客様の課題をうまく深堀りできない
アポが取れた=顧客が商談に応じてくれたということは、顧客は何らかの課題を解決したいと思っていることを意味します。もしかしたら、あなたの商材にかなり興味を持った状態なのかもしれません。
しかし商談の場で顧客の課題をうまくヒアリングできず、あるいはヒアリングできても自社商品に結び付けられないなどで、失敗してしまうことも少なくないことでしょう。営業マンのヒアリング力が足りなければ、顧客はせっかくの興味を失ってしまうのです。
顧客との信頼関係がうまく築けていない場合でも、相手は「この人になら話したい」と思ってくれないため起こりがちな問題です。
【課題4】セールストークや商品説明がうまくできず、成約に届かない
「成約につながらない」という悩みは多くのセールスパーソンが持っているはずです。顧客との信頼関係が築けていなければ、いくら成約のためのセールストークや魅力的な商品説明をおこなっても警戒されるだけです。
例えば、以下のようなことが起こりがちです。
- 商材についての説明をしているが、購入に至らない
- 商材の魅力が伝えきれていないから、成約できないように思える
- 他社の類似商品との差別化をうまく理解してもらえない
顧客が懐を開いてくれていないのに、形式的なセールストークを伝えるだけでは同じ失敗を繰り返してしまいます。
【課題5】自分だけ成果が出せず、肩身の狭い思いをしている
プロのセールスパーソンとして日々仕事をしていると、結果が出せず思い悩むことも増えるでしょう。そんな中、同僚や新入社員までもが次々に成約を重ねていくと肩身が狭く感じてしまいます。自身の焦りは頂点に達してしまうことでしょう。
焦った状態ではこれまでのように集中して案件に向き合う余裕もなくなり、悪循環に陥りかねません。
彼らもなんらかのスランプから、気持ちをまっさらにして這い上がって来たのかも知れません。それこそ新人であれば、先輩や上司からの教えに盲目的に従ったらたまたま結果が残せただけかも知れません。もし自分がスランプを感じたときは、成功している人に相談したり原点や基本に立ち返ってみることも必要です。
【プロセス別】営業や商談で抑えておきたいコツ
営業活動への苦手意識をなくすために、商談で使えるコツをご紹介します。
商談は準備、直前、本番、アフターフォローと細かくプロセスがわかれています。
各プロセスを適切に進めるためには、プロセスごとにコツが必要です。案件ひとつひとつで適切に対応し、完璧な状態で終わらせましょう。
商談前の「準備」で心がけたい5つのコツ!
商談は当日より前の段階、つまり「準備」をすることが大前提であるため、準備の時からすでに勝負が始まっているといえます。
そこで、商談前に準備すべきことについて紹介します。以下5つのコツは、セールスパーソン自身が商談本番に集中するためにも必要です。
【準備のコツ1】顧客の研究をする
商談の事前準備として、顧客の企業情報はもちろん、顧客が属する業界についての研究も必要です。
自社内に、過去その企業と関わった経験がある人がいれば心強いですが、自分が初めての場合は企業HPやSNSを読み込む、可能であれば準備用アンケート(ヒアリング)を実施するなどして、相手企業について深堀りしておきましょう。
事前に研究すべき理由は、商談本番で「予想外の質問」が来る可能性を減らすため、必要な資料が用意できていなかったという事態などを回避するためです。
事前に収集した情報は、「顧客はこういったことで悩んでいる・課題を持っているのではないだろうか」というあたりをつける「仮説設定」構築のために便利です。商談本番で、「もしかしたらこういうことに悩んでいませんか?」という提案に利用できます。実際に当たっていた場合には、セールスパーソンへの信頼度が上がる、自社製品とのマッチングがしやすくなる等の効果があります。
【準備のコツ2】確度の高い顧客なのか情報を見極める
セールスパーソン自らが顧客リストへアプローチする場合は、「今アプローチをかけようとしている対象が、本当に成約へ至ることができる相手なのか」を見極めるべきです。
それは「1人の仕事量」には限度があるため。たった1人で片っ端からアプローチしていたのでは商談に割く時間すら確保できなくなってしまいます。
アプローチ対象が多すぎる場合、例えば以下の項目などを見て判断しましょう。
- アプローチ対象の人間が、明確な目的を持っているか
- アプローチ対象の人間が、購買の権限を持っているか(キーパーソンの役職かどうか)
- アプローチ対象の「契約に向けての本気度」
またインサイドセールスが設置されていて、常にリードを創出している企業であれば、その都度アポイントが切られ、訪問すべき顧客リストが営業支援ツール上などに可視化されているかも知れません。
その中から本当に商談を開くべきかどうか検討することも、同様にコスト削減のために必要です。
【準備のコツ3】より好みはしないで、行動量で訪問数をかせぐ
相手が確度の高い顧客であると判断できたのであれば、次は行動を起こすことです。
なぜなら、契約数は「訪問数×成約率」に左右されるため。例えばあなたが20件訪問して、2件成約できたのだとすれば、単純計算で100件訪問すれば20件が成約できることになります。
したがってまずは訪問数を増やすことを意識して、契約につなげていきましょう。回数をこなせば自動的に経験が積めます。すると自分の得意分野や弱点などが明らかになるため、いずれ工数の削減など効率的な営業活動が実現できるようになります。
【準備のコツ4】断られても気に病まない。当たり前だと切り替える心構えを持つ
セールス活動を続けていると、お断りを受けることが不安な人もいるかも知れません。断られ続ければ、いつしかトラウマとなってしまうことも。
しかし、断られることは気にせず「断られて当たり前だ」ぐらいの気持ちで取り組んでみましょう。なぜなら断るも断らないも相手の自由であり、セールスパーソンに責任はないためです。
断られてもめげずに、セールストークやトークスクリプトのブラッシュアップは常におこなっていきましょう。練り上げられた自分だけのトークはいつか結果につながります。
またインサイドセールスとの連携も望ましいですが、その場合でもアポイントにつながらなくて当たり前、商談でも断られて当たり前と考えましょう。
前向きに商談と向き合い、気持ちを切り替え、あなた自身のモチベーションを維持することも大切です。不安ばかり持っていたのでは、その日の商談に悪影響が出てしまうかも知れません。
【準備のコツ5】日頃から素早く対応し、無駄を減らす
営業活動においてスピード感を意識することは大切です。なぜならあなたと同じように、あなたがセールス活動をおこなおうとしている顧客にとっても時間は平等なだけ存在し、限りがあるためです。
例えばメールには素早く返信をする、すぐには回答できないなら期限を決めて返信する旨をひとまず伝えるなど。そういった作業も、移動時のように空き時間を有効に使うなどの効率化を図れば、普段の作業をできるだけ減らすことにも繋がります。日頃から素早く対応することを心がけてみてください。
「いざ商談!」その直前に覚えておきたい5つのコツ!
商談準備の次は、商談の直前に意識しておくべきことについてご紹介します。より実践的な内容となり、いかにして顧客に好印象を抱いてもらうか、いかにして100%の自分を見せられるかのためのコツとなります。
ぜひ商談の直前に意識すべきことをおさえ、本番当日までに理想の自分となりましょう。
【直前のコツ1】目的の整理~顧客の課題を「自分ごと化」しよう
商談のアポイントが取れたら、事前の仮説設定(ヒアリングや業界研究により作成)により得られた顧客の悩みや課題を「自分ごと化」できるまで落とし込んでおきましょう。
その理由は、セールスパーソンに求められることが「商材の説明」ではなく「商材によって顧客の悩み・課題を解決する」ことだからです。
目安としては同僚などから「どんな企業なの?」「今日の商談どんな相手なの?」等と聞かれた場合でも即答できる程度が理想です。
逆に言えば、商談の5分前に例えば相手のHPを慌ててチェックしているような準備度では論外です。
【直前のコツ2】話のネタになるような情報(新聞、ニュースサイト)を入手しておこう
商談は限られた時間内で完結させなければならないため、アイスブレイク時の雑談のような内容にも気を遣いたいところです。
例えば次のような話題提供ができれば望ましいといえるでしょう。
- 顧客が「気づき」や「新たな学び」ができる情報
- セールスパーソン自身が会話中に「どれだけ顧客の理解ができているか」を測れる話題
適切な話題が提供できれば、自分の顧客理解が正しかったかどうかの確認もできます。
顧客は自分の知らない知識が提供されることで、目の前のセールスパーソンを専門家、プロであると認識してくれます。適切な話題提供により信頼が得られたという状態です。そのため、必ず相手に合わせた、商談毎に異なる話題提供や質問をすることが大切です。
【直前のコツ3】身だしなみチェック(口臭や衣服の汚れなどに配慮)しよう
商談で話すことになる顧客は当然初めて会う相手です。つまり初対面にして最高に印象が良い自分を見せなければなりません。そのためできる限り見た目をよく見せる事が必要です。
具体的には「清潔さ」を心がけてください。
例えば、以下のことについて注意を払っておきましょう。
スーツやシャツにしわがないか(前日までに調べておきアイロンをかける)、髪型、髭(男性)、化粧(女性)に不自然な点はないか鏡を携帯するなどしてチェック
笑顔を常に見せる。事前に表情筋を動かしておくと表情の幅が広がる。自然な笑顔(リアクション)が作れるように
以上のことは基本的な部分でもあるため、日頃から注意を払っていれば簡単にカバーできる範囲です。つまらないミスをしないように気をつけてください。
【直前のコツ4】前日の反省を終わらせておく
準備の章でも触れましたが、セールス活動全般に言えることとして「断られて当たり前」ということが挙げられます。毎日のように商談の場に出なければならないセールスパーソンであれば、「あの商談は失敗した」「昨日の商談はもう思い出したくない」というように前日までの反省をいつまでも引きずってしまうこともあると思います。
そんなときでもくよくよとしないことが大切です。次の商談に支障をきたしてしまうためです。
商談日が連続してしまえば、いずれにしても細かく反省する時間は取れません。「同じ失敗だけしないように気をつければいいや」「活かせる部分だけ思い出して今後に活用しよう」「前回うまくいかなかった部分は、アレンジして次回に試してみよう」ぐらいの切り替え方で気楽に構えましょう。
【直前のコツ5】商談は必ず振り返るという前提を持っておく
セールストークの築き方やトークスクリプトの作り方にも言えることですが、自分が本番に臨んでいる姿を見返すことは一番の成長材料となります。
失敗から学び、自分には何が足りなかったのかが理解できれば自分が提供する商談の質が上がります。失敗を検証すれば次回以降の傾向と対策が練れるようになります。
商談を反省材料と捉えられるようになれば「場数を踏むために、失敗してもいいからとにかく意欲的に商談の機会が得られるようにしよう」というモチベーションが得られるかも知れません。常にフィードバックの機会があるということは、常にPDCAサイクルを回せる=自己のアップデートができるということです。
対面商談の録画は難しいですが、相手に許可を取れば録音なら可能な場合もあるかも知れません。自分の商談は貴重な資料であるため、意識して振り返る機会を設けましょう。
「商談本番」での5つのコツ!
商談本番のプロセスはアイスブレイクやヒアリング、クロージングなど細かく分かれています。
「いま顧客はどの段階にいるのか」を見極め、段階を移行するかどうか判断するのもセールスパーソンの役目です。各段階ごとに必要なコツがあるため、確実に身につけて商談に臨みましょう。
【商談本番のコツ1】自分の第一印象を良くし、アイスブレイクを始めよう!
商談が始まったら、自分の第一印象を上げることに努め、アイスブレイクに移ります。
具体的に、挨拶時は以下のことについて心がけましょう。
- 案内を受ける際、顧客が入室した際は素早く起立する
- 整った姿勢と笑顔で挨拶、名刺交換する
挨拶がスムーズに終えられたと判断できたら、すぐにアイスブレイクをはじめます。顧客との信頼関係を築くためには、やりすぎない程度の「自己開示」も必要です。
アイスブレイク時は以下のように、基本的には顧客が応えやすい世間話のような雑談をメインに話してみましょう。
- 【準備1】の仮説設定構築の際に得た情報から、担当者との共通点を見つけておき、その話をする(スポーツ・エンターテインメント・etc)
- 初対面の相手と話すために適したジャンル(趣味・気候・健康・仕事・家庭・旅行・近しい人の話・衣食住・etc)から会話内容を事前にピックアップしておく
- 相手企業の周辺環境(駅の雰囲気・道筋・工事箇所・etc)
- 相手の業界に起きたニュースについて、素人目線で質問して反応を伺ってみる
アイスブレイクによって、商談開始3分前後で顧客がパンフレットを開いてくれているような状態が築ければ理想的です。
【商談本番のコツ2】商談での適切な話し方を抑えよう!
商談に入る際は、少し真面目な話し方で以下のようなことを顧客に伝えましょう。
- 今回の商談(訪問)の目的を簡潔に話す
- 自社を紹介する(企業理念・事業内容・アピールポイントetc)
真面目なトーンで話す理由は、場の空気が引き締まるとともに雑談から商談へと切り替わったことを参加者が意識できるためです。
商談本番に入ったら、以下のような話し方を意識しましょう。
- 落ち着いて、ゆっくりと話す
- 丁寧に、礼儀正しく振る舞う
- ヒアリングを重視して会話する
- 強い売り込みはしない(飛び込みの場合は特に意識する)
- ゆっくり/ハッキリと話す
- 言葉の使い方に気を付ける
- 一方的に話すのではなく相手の話を聞く
- 「なるほど」以外にも相槌の種類を5つ以上持つ
【商談本番のコツ3】ヒアリングで顧客が持つ「本当のニーズ」を探る!
顧客の本当のニーズは本人にもわかっていないことがあるため、セールスパーソンには「正確なニーズを導き出すためのヒアリング力」が必要です。
【準備1】で作った仮説設定が正しければ本番のヒアリングで力を発揮します。
顧客の本当のニーズを引き出すことができれば「この人はわかってくれている」と信頼を抱いてもらうことにも繋がります。
顧客が本当に欲しいものとは「そのために行動せずにはいられない」ほど、心の奥深くに関わるものです。徹底的にヒアリングして、本当のニーズを引き出しましょう。
顧客が大切にしている価値観・考え方を揺さぶることで「ホットボタン(購買につなげるスイッチ)」がわかります。セールスパーソンは顧客のホットボタンを探し、ここぞというタイミングで押してやることが商談という道のりで成約へたどり着くために必要です。
ホットボタンの押しかたとして、以下のような方法が挙げられます。
- シンプルにメリットを話す
- 効果を実証したデータなどを見せる
- 他社の成功事例、著名人からの推薦情報を提示する
- 実際に商材を体験してもらう
- 現状を踏まえ、その環境にもし商材が加わったらどうなるかを具体的にイメージしてもらう
- 商材を利用しているイメージから、自社の未来を想像してもらう
上記の方法をとれば、顧客が「自分ごと化」するのを進めやすくなります。クロージングに繋げやすくするために、顧客がどのように反応してくれているか、話し方や会話内容、表情の変化に注意を払いましょう。
【商談本番のコツ4】「顧客の成功」のために常に相手の立場で考え、不安解消につなげる!
購入前の顧客は、以下のような不安を抱いています。
- 商材によっていい結果が得られるだろうか、使いこなせるだろうか
- 失敗したら、周りにどう言われる、思われるだろうか
- 本当に信頼できる相手だろうか
- 他社は同じことをしてうまくいっているだろうか
- この金額で決めてしまっていいだろうか、etc……
購入への意欲が高まると、商材へ期待することにより、顧客の心理に不安を生んでしまうことも自然なことです。
そのためセールスパーソンは、まず顧客の成功を第一に考える必要があります。上記のような顧客の心情に寄り添い、以下のような方法で顧客の不安を解消していきましょう。
- 不安を話させる:先んじて不安点を聞いてしまい、トークスクリプトを使うなどして和らげる方向へ誘導する。「顧客の役に立ちたい」と言い切る
- 先にネガティブ情報を提示する:必ずカバーできるセールストークを用意しておき「他の顧客からもこういった点が不安だと言われたことがあるが、このように解決してきた」といった事例を交えながら紹介する
- 「その場しのぎの情報」や「情報の小出し」を避ける:価格などはごまかさず提示する、コスパの良さなどで価格への不安を補う、など
- ホットボタンを使って商材の価値を全面的に推しだす:【コツ3】にもあったホットボタンは顧客の心の琴線に触れるため絶大な効果をもたらす。使いすぎに気をつけ、顧客の不安を拭える可能性がある場合などを想定して、事前におさえておければ便利
上記のように顧客の立場に立って不安点を解消していければ、顧客は「よくある自分本意な営業」をされているとは思わなくなります。
顧客の立場となれているかの目安として「すぐに相手(企業)の褒められる点を3つ以上挙げられる」程度が理想的です。
不安を解消しようとする行為により「こちらのことを理解しようとしてくれている」と顧客に思わせられます。顧客はセールスパーソンに安心をいだき、信頼を寄せてくれるようになります。
商談で出会う顧客は当然毎回異なるため、商談毎に適した提案は必ず異なります。そのため、その商談における顧客が本当に求めていることを商談内で探らなければなりません。
【準備1】で準備した仮説設定は、毎回の商談ごとに1から仕上げる必要があります。
【商談本番のコツ5】「同意」を引き出せるテストクロージングを!
顧客の課題に対する解決策を探り、不安を解消できたら、クロージングに進みます。しかしいきなりクロージングに移行するよりも、営業プロセスの各段階で顧客の気持ちを商材購入へ近づける「テストクロージング」をしておくことが効果的。
クロージングの前にテストクロージングをおこなうメリットは以下です。
- 顧客の不安が和らいでいるかどうかがわかる
- 顧客が商材を導入することによるメリットを理解しているか、商材により課題を解決する可能性があることを理解しているかどうかがわかる
- クロージングまでに顧客の「Yes」「自己肯定」「前向きな気持ち」を積み重ねることで、後から否定しづらくなるという心理状況をつくる
- 顧客の気持ちが本当に商材の購入に向かっているかどうかがわかる
テストクロージングがうまくできていれば、クロージング自体をスキップすることも可能。そのため積極的にテストクロージングを取り入れたいところです。
営業プロセスの各段階におけるテストクロージングの聞き方は以下の通りです。
「もしご興味がおありなら、詳しくご説明いたします」「もし○○ができるのであれば、もう少し話を聞きたいとお思いですか?」
「仮に、○○という悩みや××という課題が解決できるとすれば、購入したいと思いますか?」「商材によって課題を解決したい気持ちは何%ぐらいでしょうか?」
「○○という不安条件が取り払えるならば(○○という要望が満たせるのであれば)、前向きな気持ちになれるでしょうか?」、実際に商品を見せたりサービスを利用させることで「自分が使っている状況」をリアルに想像してもらい、使ってみてどんな気持ちか、不満点がないかを聞き取る
「仮に購入するとして、今のうちにお知りになりたいこと・明らかにしておきたいことはありますか?」
「仮に購入するとして、○○と××のどちらを選びたいと思いますか?それはどうしてですか?」
テストクロージングは「はい/いいえ」しか答えがないクローズド・クエスチョンではなく、自由に答えられるオープン・クエスチョンで聞くことをおすすめします。それは顧客の頭の中に「購入後のイメージ」を湧かせやすくさせるためです。
顧客の「購入したい」という気持ちが高まったと判断できれば、購入するかどうかを確認するフェーズに移行します。
商談後の「顧客フォロー」でのコツ
商談後は、当日か翌日までにフォローアップメール(お礼メール)を送りましょう。
フォローアップメールには以下のポイントを含めておきましょう。
- 商談のために時間を作ってもらったことへのお礼
- 商談内で確認した内容のまとめ
- 商談の内容を踏まえた上で、足りない部分のヒアリング(必要な場合)
- 次回の商談日程の確認(次回がある場合)
貴重な時間を拝借したこと、何か気づいたことや疑問が生まれた場合はいつでも問い合わせて欲しい旨を添えておくことでセールスパーソンへ良い印象を抱いてもらえます。実際に質問を受けた場合などは、日時を決め、その日までに回答する旨を伝えておきます。
仮に相手からの反応が乏しい場合は、一週間以内に再度メールを送りましょう。上記と同じ内容にしてしまうと逆効果なので、より興味を持ってもらえそうな話題を加えたりするなど工夫してみましょう。
また、わかりやすい資料を提供しておけば、顧客が商談後に稟議のための会議などで使いまわせたりと、自社へより好印象を持ってもらうきっかけにもなります。そのため、資料は図解を含めたりや大きな字で理解を深めやすいように作成するなどあらかじめこだわっておきたいところです。
成約のために、自分だけの勝ちパターンを形成していこう
セールス活動で経験を積むことによって、自分専用のパターンが獲得できるようになります。以下では、自分だけの勝ちパターンを得るためのアドバイスを紹介します。セールス活動に伸び悩みを感じたり、立ち止まってしまったときなどに参考にしてください。
どのように自分だけのパターンを作るか?
これまで、セールスには基本的なプロセスがあると紹介しました。ただ、商談ごとの状況によりプロセスは変わってしまうことが多いでしょう。そのため、各プロセスをさらに掘り下げることで「自分が決めやすいパターン」として落とし込むことができるようになります。
具体的には以下のように掘り下げてみましょう。
- アプローチ/ヒアリング:ビジネスパーソンが得意とする分野の話に誘導する
- 提案中/オファー段階:ビジネスパーソンが得意とする分野に誘導した上で、自分のペースを維持しながら話す
- クロージング:ビジネスパーソンが予定していた落とし所へ誘導する
はじめのうちは、自分が得意とする分野がなにかはつかめません。場数を踏んでいくごとに「こういった誘導ならできる」「以前成約に至った方法と同じパターンだ」ということが見えてくるようになるでしょう。
自分の商談を振り返ってみることで、自分の長所は強化でき、短所を補えるようになります。本番さながらのロールプレイングや、商談の録音をしてみたりしてフィードバックの機会を増やしましょう。
第一線のトップセールスが考えていることを参考に
トップセールスと呼ばれる人々は、自信を持って商材を取り扱っています。「自社商材は、本当に素晴らしいものである」と思うのと同時に、「商材を利用する人の利益が最大限に出せる」と信じてセールスしています。つまり顧客の立場で物事を考えています。
そのため、顧客の課題を探るためのヒアリングは徹底的におこないましょう。準備の章でも挙げた仮説設定の完成度が高まるということは、それだけ顧客の立場で物事を考えられているということです。少しでも顧客の立場に近づくためには顧客本人から話を引き出さなければなりません。商談の前段階から、アンケートやヒアリングをできるだけ実施しておきましょう。
営業活動で心の内に湧く「罪悪感」をどう処理する?
セールスという行為が押し売りのように思え、罪悪感を覚えるセールスパーソンも少なくないことと思います。
セールスが押し売りに思えてしまう理由は、「あらかじめ心理的な合意が取れていない」ためです。そのため、商談のはじめに「今日はお客様の状況を良くするための提案をするし、場合によってはセールスもおこなう」ということを顧客に伝えることで、顧客は「いきなり売り込みをかけられた」とは思わなくなります。
実はあらかた説明をし終わった後に「こういう商品があります~」とプレゼンしてしまうほうが、顧客にとっては押し売りに見えてしまうのです。
商談では押し売りだと思わない/思われないために、「冒頭で場の目的を共有する」という心理的合意を図っておきましょう。
場の目的を共有した際に抵抗感を告げられた場合は、潔くセールスを終わりにすることも大切です。今回余ってしまったエネルギーは、次の顧客のために使いましょう。
商談プロセスを振り返り、自分のつまづいている点を把握して成功につなげよう!
商談でうまく結果が出せない場合、自分が商談のどこでつまづいているのかを確かめるため、商談をプロセスごとに切り分けて振り返ってみてください。
各プロセスごとに、商談を上手く進めるためのコツが存在するので、しっかり自分の中に落とし込みましょう。
商談は、本番より前の準備段階から勝負が始まっています。自身が取り組むべきことはすべて取り組めているかどうか、定期的に振り返って確認してください。
セールストークなど練習や経験によってスキルが鍛えられるものも存在します。
商談に苦手意識を持っているセールスパーソンでも、少しのコツで自分を変えられます。ぜひ次の商談は少しでも良い結果が残せるよう、意識的に取り組んでみてください。