営業がうまく行かないとき、上司から「センスが足りない」「センスを磨け」と言われることがあります。
とはいえセンスの一言では意味がわからず「そんなこと言われても、センスってなんなんだよ」という状態になってしまい、改善につながらなくなってしまうでしょう。
これでは自分の営業活動に自信が持てず、行動が鈍ってしまいかねません。
実は、営業センスは自分のペースで後からでも身につけられるものです。
そこで今回は、誰にでもできる「営業センスを得るための方法」について解説します。
営業センスとはなんだろう?
まず「営業センス」という言葉の意味がわからない、もしくは「意味はなんとなくわかるけど、営業センスとか、営業スキルとか似た言葉が多くて困る」といった方向けに、営業センスとは何のことなのかを改めて確認していきましょう。
営業センスと営業スキルの違いって何?
営業センス・スキルの違いについて解説します。
営業スキルとは、専門記事にもあるように営業活動の中で必要な「技術」を指します。
トラブル対応力やロジカルシンキングなど、実践的な技であることがわかります。
一方「営業センス」とは「感覚に依存する」ことが多く、先天的なものもあれば技術のように努力で磨くことも可能です。
営業センスがない人の特徴とは?
それでは「営業センスがない人」にはどのような特徴があるのかを解説します。
本項をご覧になって、自分に心当たりがあるかどうか確かめてみてください。
【特徴1】売り込みが強すぎる
営業センスのない人は、自分がセールスパーソンであるから、とにかく自社商材を相手に売り込もうとしてしまいます。
売り込み感を相手から眺めると、「強制的に金銭を取られてしまう」となり、相手の心は警戒心一色になります。
気持ちだけ先走って、顧客のニーズも掴めていないのであれば明るい展望が待っている可能性は非常に低くなります。
【特徴2】型通りのセールスしかできない
営業センスがなく成果が出ない人の特徴として、型通り・マニュアルをなぞった営業しかできないというものがあります。
本来、営業のマニュアルとは顧客に合わせて柔軟に変えてニーズを深堀りするものです。
マニュアルをそのままなぞっただけでは、失注になった商談から学べることもなくトークスクリプトのブラッシュアップなども望めません。
【特徴3】一方的に話しすぎる・空気が読めない・傲慢
商談でもテレアポでもセールスパーソンにはトークスキルが必要です。
ここでマシンガントークのように自分が一方的に話してしまうことは非常に危険です。
これは商材理解ができていると逆に起こりがちなケースです。商材の良いところをなまじ知り尽くしているあまりに、「商材の魅力さえ理解してもらえれば、必ず買ってもらえる」と思い込んでしまうのです。
別の視点から見ると「空気が読めない」、自分のやることが正しいと思いこむ「傲慢さ」があるとも言えるでしょう。
【特徴4】精神的に打たれ弱い
営業活動では「お断り」を受けることが非常に多くなり、通常のメンタルでは太刀打ちできないこともあります。
この場合、ひとつひとつの案件に毎回打ちのめされ、足が止まってしまうようだと今後の業務に支障をきたしてしまうでしょう。
顧客からお断りを受けても、心を乱さずにあらゆるベクトルから攻め返せるような手札を持つことが必要になります。
【特徴5】本命以外の要素をないがしろにしてしまう
例えばアポイントを取る際に、相手と交わした口約束(資料の用意など)のようなものがあったとします。
商談本番で、この約束を忘れてしまったり、精度の低い資料などを提示してしまうセールスパーソンは営業センスに恵まれていないといえます。
上記はアポイントを得るという目先の目的に気を取られ、相手との信頼構築がおろそかになっている状態です。
このような状態だと、顧客企業を訪問した際にも案内してくれた人に対して適当な態度をとってしまうことも。
悪い噂とは相手の組織内ですぐに共有されてしまいます。後から自社の信頼を失墜するといった問題を引き起こしかねません。
また、失注した顧客の扱いも悪くなりがちです。
失注すると「もう縁がなくなった」「自分の評価につながらない」として、顧客管理ツールなどに情報を打ち込む義務をやめてしまったり、追客メールなども自分のタスクから除外してしまい、結局ビジネスチャンスを逃してしまいます。
そもそもひとつの案件はマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス……と数多くの人員と部署が力を合わせて獲得したものであり、営業プロセスに本命もそれ以外もありません。
目の前のプロセスを全力で担当することが当然であるため、すべての業務をメイン・本命であるととらえるべきです。
【特徴6】数値での目標管理をしない・気分屋
営業課における個人のKPIは、どれだけ契約できたかという結果よりも、どれだけ行動できたかといった行動量を数値目標として設定することがスタンダードです。
しかしながらこの数値目標をぼんやりと捉え、あるいは結果さえ出せばいいだろうとしてしまい、例えば1日10回目標としているテレアポの回数をおざなりにしてしまったりしてしまうことが営業センス向上の邪魔をします。
回数をこなせるということは、それだけ技術を磨くチャンスがあるということでもあるためです。
気分屋だから今日はこれだけしか業務をしない、という姿勢では周りとの歩調もずれてしまいます。
「営業センス」がある人の特徴とはなんだろう?
営業センスをいきなり持つことは難しそうですが、既に「センスがある」人の真似をすることで同じ状態に近づくことができます。
本章では「営業センスがない」と思っている方でも真似しやすい、センスありな人の特徴について解説します。
【特徴1】第一印象が良い
営業活動においては顧客への第一印象がその後の成約の決定打となることが少なくありません。
このため、営業センスがある人は第一印象を良くすることを常に心がけています。
第一印象を良くすることで得られるものの代表は「信頼」。顧客の心理的安全基地の形成に寄与します。
第一印象を良くするためには礼儀や身だしなみ、声の出し方など五感に訴えかける部分を磨く必要があります。
【特徴2】タスク管理が上手く、顧客との接点を独自のタイミングで形成する
顧客への連絡は多ければ多いほど良いと捉えてしまいがちです。一方もちろん連絡への反応は早くすべきであり、営業センスがある人の特徴ではあります。
しかしながら流石に毎日のように情報を送られては顧客はうんざりしてしまいます。特にまだアポイント手前のような検討段階では売る側は焦ってしまいがちで、多弁になりかねません。
セールスパーソンは、大量に抱えた案件の中からとにかく日頃のタスクをこなさなければならないと躍起になり、盲目的に目の前にある連絡などを済ませてしまおうとして、上記のようなことを起こしてしまいます。
まさに手段が目的となってしまっている状態です。
営業センスがある人は、顧客との関係を詳細に管理し、慎重に扱っており、例えばサービスの試用期間が切れそうなここぞというタイミングで連絡します。
「タスクを片付けなければ」という考え方になればなるほど、書類の提出期限日を忘れてしまったり、極端な場合はアポイント日を間違えたりしてしまいます。
これは自分が今向き合うべきタスクが解っており、スケジュール管理を徹底している人であればこそ磨かれるセンスと言えます。
大きなタスクを実行するためには、タスクの分割などを行い、足元のできることからひとつずつ処理する能力も必要です。
このためセンスのある人は目標をはっきりと見据え、達成するためにはどうすればいいかを理解しており、効率よく仕事を進められることも特徴です。
【特徴3】ヒアリング力が高く、見返り求めず相手の欲しい「もの」「こと」を先に提供する
営業センスがある人は「売る」という考えをあまり持たず、「顧客の必要なものを用意し、与える」という相手の立場に立った提案を行います。
これは物事を常に顧客の立場に立って考えることによる「自分ごと化」によるものです。
相手の立場を察し、最適な提案を行うためより相手の懐に近づくことができます。
トップセールスの中には、本当に顧客に合っているのだと思えれば競合他社の商品を勧める人もいるほどです。自己利益のために、価値がないものを無理やり売りつけるなどはありえません。
これは、経験にも左右されますが顧客理解のための事前準備を徹底しているからこそ実現できることでもあります。
同じく事前準備により「相手がこんなことに困っているのではないか、こんな立場なのではないか」という予想に基づいて商談を起こすため、非常にヒアリング能力が高く、専門的知識を簡潔に相手に伝えられることも特徴です。
【特徴4】コミュニケーションに必要な雰囲気をつくる
【1】とも共通しますが、商談では顧客が円滑に話せる環境が必須であるため、コミュニケーションづくりが重要です。
第一印象を良くすることで相手の胸襟を開き、アイスブレイク等によって心理的安全基地(ラポール)を築きます。
商談ではセールスパーソンが話す量よりも、顧客が話す量を増やさなければなりません。
雰囲気作りがうまい人は話上手なだけでなく聞き上手でもあるのです。
【特徴5】幅広い知識がある、会話の主導権を握り続けられる
商談における相手とのコミュニケーションには事前準備が必要であることは【3】でも述べましたが、情報収集には幅広い知識が必要です。
毎度異なる業界の顧客を相手にする場合、アイスブレイクひとつ行うにしても各業界の「あるある」などに精通していなければなりません。
また、相手の会話を引き出すことが商談の鍵ですが、ヒアリングやクロージングなど商談を成約に導くための「切り替え点」を握らなければなりません。
営業センスを磨くことで、この会話の切り替えを操作できるようになります。
あくまで会話の主導権はこちらが握り、必要な時点で商材説明や契約条件、次回アポなどの話題に移行させるというものです。
顧客の「ホットボタン」を押し続けられることも営業センスがある人の特徴です。
【特徴6】仕事が「できる」雰囲気がある
【4】の雰囲気作りとはとは少し異なり、「仕事ができる人であるといった雰囲気」を漂わせられるのも営業センスがある人の特徴です。
相手を安心させるコミュニケーションだけでなく、理路整然とした話し方や書類ひとつの見せ方にしても隙がないため、顧客は「この人になら、自社の課題を打ち明けられる」「この相手とならともに自社の将来を考えていけそうだ」と思ってくれやすくなります。
相手の大切な相談相手となるには、馴れ馴れしい関係を築けばいいというものではありません。
時にはヒントを与えるだけで、少し突き放したような印象となるものの、相手の自主性に訴えかけるといった高度なテクニックを使いこなすトップセールスも存在します。
漫才で言えば、セールスパーソンはボケではなくツッコミの方になるとイメージしてもらうのが近いです。
自分がボケて相手のツッコミを待つのでは被提供側です。相手の言葉を注視することで自らつっこみ、相手を美味しくするという考え方です。
営業センスを身につけるための方法
営業センスとはどのようにすれば身に付けられるかについて解説します。
センスがある人の特徴を見た通り、ヒアリング力やタスク管理、身だしなみ・表情・声のトーンの作り方など後からでも身につけられる「センス向上のための行動」は存在します。
営業センスがないと思っている方はぜひ、センスを高めるためのひとつの行動指針として参考にしてみてください。
【方法1】営業センスがある人の真似をする
前段落の【営業センスがある人の特徴】は、意識することである程度真似することが可能です。
このため、トップセールスと呼ばれる人や、自分や周りの中で「センスがある」と言われている人の行動を真似したり、自分の活動内に取り入れてみましょう。
簡単なことから始めて構いません。「聞き役に徹する」「第一印象だけはとにかく良くする」など真似しやすいことはたくさんあります。
何も考えずにまず真似してみることで、なぜその行動を選んでいるのかが感覚的につかめることもあります。
感覚、つまりセンスが磨かれている証拠です。
また「どのように真似すればいいか」をセンス持ちの人へ直接聞いてしまうのも手です。
ビジネスパーソンとして真剣に困っている、ということが相手にも伝わり、センスを磨く以上の相談ができるかも知れません。
【方法2】ロールプレイングなどで営業される立場になってみる
セールスパーソンとして営業センスを磨くためには、営業される側の立場に立ってみることも重要です。
セールスする側は、顧客の立場から課題や困りごとを自分ごと化しなければならないし、どのように提案をされれば売り込み感がなくなるかといったことが客観的目線から理解できるためです。
簡単に売り手以外の立場を体験するには営業ロープレが便利です。同僚がどのようにセンスを磨いているかが学べるチャンスもあります。
センスを養うロープレを行う際には、ただトークスクリプトを身につけるためだけのロープレとは異なるアプローチも必要です。
フィードバック役が使うチェックリストを、本段落を参考に自社のテーマに沿うように作成してみて下さい。トークスクリプト用とはまた別に作成することを推奨します。
顧客はどうすれば心を開いてくれるのか、どうすれば喜ぶか、目的の反応を引き出すためには何が必要かといった思考を重ね、あらゆる方法を試してみましょう。
【方法3】様々な業界の人・知識と触れ合う
営業センスとはコミュニケーションの中から磨かれることもあるため、自分が所属する業界だけに付き合いを固執することはナンセンスです。
このため、積極的に異業種交流やセミナーなどに顔を出してみて、未知の業界の人々と触れあってみてはどうでしょうか。
もちろん、ビジネス書など少しでも興味がある分野の書籍を読むことも自分の引き出しをアップデートするために有用です。
【方法4】心理学・脳科学的アプローチをする
営業の本質がコミュニケーションであるならば、心理学や脳科学のメソッドが応用できます。
例えば「押し売り感」を出したくないのにどうしても出てしまうと感じてしまう、せっかく成約に至っても、相手は無理して買ってくれるのではないかといった悩みを抱えるセールスパーソンは少なくありません。
しかしながら、商談のはじめに「心理的合意形成」を得ることで押し売り感が消えるなど、商談を上手に進めるためのテクニックが存在します。
心理的合意形成とは例えば「本日は顔合わせではなく、実際に商品説明をさせていただきます」とあえて手の内を明かすことで、相手の心理的ハードルを下げておくといった方法です。
他にも、単純接触効果を狙ってなんとかクライアントと対面する機会を得ようとする人、顧客に共感を示すことで心理的安全基地の形成を促すといった基本アプローチが商談開始時にできる人も、脳科学をうまく利用して営業センスを高められている例と言えるでしょう。
【方法5】PDCAサイクルを回す
どの営業プロセスにおける能力アップにも言えることですが、PDCAサイクルを回すことを意識することは重要です。
なぜなら改善点が判明し、行動指針が明確になるからです。
何をすればいいかがわかっていれば、後は行動するだけであるため心理的負担も少なくできます。
営業センスは後天的に身につけられる!あきらめないでまず一歩目を踏み出そう
営業センスとは、ビジネスの現場で生きるための感覚そのものであるため、先天的に身についていなければ後から自分に身につけるのは無理だ、と思ってしまうかも知れません。
あるいは、センスがないから営業が自分には向いていないと思えてしまうかも知れませんが、それは間違いです。
営業センスとは、できている人を少し真似すれば誰でも得られる感覚です。後からでも身につけることが可能です。
人のマネをすること、トークスキル練習とはまた違うロープレ実施など、すぐにでも取り組める営業センス向上のための行動があります。ぜひ営業センスをひとつでも身につけるために取り組んでみてください。