2020年頃から、対面自粛に伴い商談はオンラインで行う機会が圧倒的に増えました。
しかしながら、「従来の対面商談に慣れていた人ほど結果が残せない」という悩みが現実に増えています。
悩みが発生する理由は、オンライン商談だと、リアル商談と異なる技術が必要となるためです。
オンライン時に商談が失敗してしまうということは、顧客の信頼が勝ち取れていないという意味でもあります。
そこで今回は、オンライン商談でいまいち結果が残せない方でもすぐに取り入れられる、「顧客の信頼を勝ち取るためのオンライン商談での適切な話し方・トーク」について解説します。
まずはオンライン商談用のツールなど、必需品の事前準備をしよう
オンライン商談は、対面商談と異なる部分がメリットにもデメリットにもなります。
大きな利点として、移動に関する時間やコストに悩まされないため、時間的余裕が生まれるというものがあります。
しかしながら、その浮いた時間をきちんとオンライン商談向けの準備に費やせなければ意味がありません。
本段落での準備とは、オンライン商談を行うためのPCの準備、カメラやマイク、通信回線といったハード面を指します。
本コラムでは、オンライン商談の準備が一通りできているという前提の元、解説をしています。
オンライン商談における準備を万端に行うために、専門記事もご覧ください。
準備用の専門記事ではオンライン商談に使うアプリをZoomと仮定して解説しています。ウェビナーの準備などにも活用いただけます。
実践しないとわからないオンライン商談失敗の原因とは?
ここまでで、ハード面でのオンライン商談の準備は完了したと思います。
しかし、実際には顧客本人と対面しないとわからないトラブル、あるいは対策しなければならない事項がいくつも浮上するものです。
ハード面がクリアできても、オンライン商談が振るわない理由は、この「本番での対策」が不十分であるからです。
つまり本章における「失敗理由さえ回避すれば良い」とも言えますが、実は失敗理由を回避して初めて、セールスパーソンの実力が問われる段階(まずアイスブレイク、そして自己紹介〜クロージング等)へ移行できます。
ここから、顧客の「信頼」を勝ち取っていき、商談を成約に導かなければなりません。
失敗理由を回避して、ようやくフラットなテーブルに立てた状態、本来の商談の段階としてはまだゼロ地点です。
そこで本章では、オンライン商談における失敗の原因について解説しますので、ぜひこの失敗を避けることを念頭に置くようにしてください。
【失敗理由1】相手の表情、その他「感情表現」が読み取れないから
モニターの解像度や相手の環境にも左右されますが、オンライン商談では対面商談よりも顧客の感情が読み取りづらくなります。
表情ひとつとっても、こちらのアイスブレイクなどに笑ってくれているのにそれが伝わらなかったり、音声が反響してしまい、怒っているような聴こえ方をしてしまうことも。
慣れも必要ですが、オンライン商談中は常に相手がどう思っているか気を配り続けなければなりません。
オンライン商談に合わせたトークスクリプトを用意し、ロープレによってブラッシュアップしていくことが必要です。
【失敗理由2】ハードウェア的理由で商談が阻害されるから
オンライン商談の失敗理由として、当日の回線不具合、機器不調により声や映像が途切れるというものがあります。
セールスパーソン側は上記トラブルが起こるたびにモチベーションがリセットされ、顧客側もまた同じ説明を受ける羽目になり、時間的拘束が伸びることで温度感が下がります。
またこうして音声や映像が途切れてしまうことは「今日は一旦話を終わらせたい」つまり案件を停止したい、と申し出る機会を相手に与えることにもつながってしまいます。
そうならないために、これまでもリンクした準備編では相手との事前テスト通話などを行うことを推奨しています。事前テストにおいて、通話アプリなどの使い方をセールスパーソンがレクチャー、見え方・聞こえ方のテストをしてあげることは、本番当日より前に得られる絶好の信頼構築の機会でもあるのです。
商談経験豊富でもオンライン商談が上手くいかないのは「五感の優位性が変わるから」
これまで見てきた、オンライン商談の失敗理由、顧客の信頼が勝ち取れない理由について総合的に解説します。
オンライン商談が失敗するのは「五感」の感覚がリアル・オンラインで全く異なるため、です。
本章における五感の定義とは視覚・聴覚・身体感覚・味覚・嗅覚の5つです。
五感の感覚が異なるとだけで、相手に与える印象は大きく変わります。
特にリアルとオンラインで大きく変化する項目は、「視覚」「聴覚」それぞれにおける情報の受け取り方です。
そのため、これまでどれほど対面での商談を成功に導いてきたベテランでも、オンライン商談になったとたん成果が出ないということが起こりうるのです。
リアル商談とオンライン商談それぞれにおける感覚の違いは、以下の表の通りです。
リアル商談での重要度 | オンライン商談での重要度 | |
視覚情報 | 55% | 大きく減衰する |
聴覚情報 | 38% | 中程度高まる |
聴覚情報のうち「話の内容」 | 7% | 大きく高まる |
上記の表のように、ことオンライン商談においてはリアルではそれほどでもなかった「聴覚情報」の中でもとりわけ「話している内容」についての比重が大きくなることがわかります。
このため、聴覚情報における「声のトーン」「聞き取りやすい話し方」を重視するとともに、相手を惹き付けるための話の内容を導く自分だけのセールスロジックが必要となります。
視覚情報の重要度が下がる理由
オンライン商談において視覚情報の重要度が下がる理由について解説します。
ビデオ通話ではPC、タブレット、スマートフォンを使用します。
それぞれの画面では、人の全身が映ることはほぼありません。
リアル対面では、相手の頭からつま先まで、全身を見ます。
オンライン状態では、どのような通話も基本的に画角はバストアップのみです。
言ってしまえば、上半身をバーチャル背広が着れるアプリにしたところで相手に違和感を抱かれない可能性が高いのです。
これは商談に限らず、社内会議をオンラインで行う場合にも言えますので、意識してみてください。もちろん、次項「聴覚情報」においても、同じことが言えます。
聴覚情報の重要度が上がる理由
オンライン商談において聴覚情報の重要度が上がる理由を解説します。
オンライン状態では、視覚情報の重要度が減衰した場合に他の感覚で足りない情報を補おうとします。
これが聴覚情報であるため、重要視されるのです。
聴覚情報の構成要素は「声のトーン」や「話し方」であると説明しました。
さらに大切なことが「話している内容」「取り扱っている話題の中身、その正当性」です。
この理由は、オンライン時だと「余計な情報はノイズとなる」ためです。
オンラインで実施されたイベントは、前述のように聞き取りづらくなることもあり、割と相手に「もう一度話してほしい」と聞き返しやすくなります。それを折り込み済みであるため、開催元も質問時間などを頻繁に設けます。
また、録画やアーカイブなどを用いると基本的に何度でも繰り返し見聞きできます。
このため、話の内容が理解できないとなると、脳化学的にはその部分がノイズとなって相手の理解を妨げてしまうのです。
筋立てられたセールストークのノウハウがなければ、その後の成約率を大きく左右されてしまいます。
顧客の信頼を勝ち取るオンライン商談での話し方
オンライン商談で顧客からの信頼を得なければならないのはリアル商談と同じですが、やり方が異なります。
顧客の不信を信頼に変え、落ち着かせるための関係構築を脳科学的な用語ではラポール(心理的安全基地)といいます。
ラポールが築けなければ、オンライン商談の失敗理由である相手の感情の掴みづらさは改善されないどころか、お互いに本当にコミュニケーションが取れているのか、提案の一部でも伝わっているのかと泥沼のような状態になってしまいます。
そこで、この3つを押さえればオンライン商談での信頼獲得が可能になるという方法について解説します。
【話し方1】会話の内容に合わせて表情形成を意識する
オンラインでの会話において、表情形成は心理的な緊張を解きほぐすために重要な要素です。
ぜひオンライン商談では、どのタイミングでも爽やかな笑顔をさっと見せられるように心がけてみて下さい。
仮に緊張した表情のセールスパーソンが画面の向こうに現れ、何か商品を勧めてきたとして自分が購入に至るかどうかを想像してみるとわかりやすいです。
極端に言えば、対面の商談では表情を作らなくとも受注にこぎつけられたセールスパーソンは少なからずいたかも知れません。
しかしながら、無表情でも受注が取れる理由は、リアルの特性が活かせていたからこそです。
ストーリー仕立てや熱量により、相手の感情に訴えかけることに成功していたためではないでしょうか?
ベテランのセールスパーソンにありがちなのが感情に訴えかけるセールスです。
このため、熱量の通じないオンライン商談において挫折を味わうセールスパーソンが増加しています。
無表情のまま、微動だにせず顔だけが写っている画面からは情熱を伝えることはできません。
表情の練習には、画角を自分に合わせたビデオ録画などを行いロールプレイングを実施してみると効果的です。
【話し方2】画面に映るバストアップ以上の見え方に気をつける
【1】でも触れましたが、オンライン通話の画面に映されるものはプレゼン資料などを除けば終始自分のバストアップです。
このため、バストアップにおける情報の多くを占める「姿勢」「身だしなみ」を整えて話すことが心理的安全を形成するために重要です。
「画面に映される情報」という意味合いにおいて、背景も当然意識しなければなりません。
バーチャル背景を使う分には気にしなくていいかも知れませんが、もし当日原因不明の不具合で利用できなくなった場合、自室の背景を見せることになります。
この際に、片付けが適当であったり、物干し竿なんかが見えたりすると【聴覚情報の重要度が上がる理由】でも示したように、顧客にとって「ノイズ」となってしまいます。
商談後に「話は良かったし、納得したけど変な背景だったなぁ」という印象を残してしまい、評価を下げる理由となってしまいます。
「見え方」に問題がないかどうかは社内ロープレ、特に本番同様のオンライン通話状態で同僚に確認してもらうことで改善してみると良いでしょう。
特に、新人の営業パーソンは身だしなみ、姿勢、見え方に気を配ろう
この【話し方2】は特に新人であるなら特に気をつけたい部分です。
新人であればどうしても、セールストークは未熟なものです。このためオンライン商談でも重要な要素である「会話の内容」で顧客に訴えかけることは難しくなります。
トークスクリプトのブラッシュアップやロールプレイングの実施により底上げは可能ですが、場数を重ねなければ知識や裏付け、プレゼンテーションスキルなどが付け焼き刃であることはたやすく見抜かれてしまうほど、なかなか身につきづらいものです。
そこで新人のうちは特に「見え方」に気を配りましょう。
例えば、背広を正しく着る、整ったワーキングスペースを保持した状態でオンライン商談に望む等により、少しでも見え方を良くするということが考えられます。
見え方に気を配っていることが相手に伝われば、「この人は自分のために環境を整えられる人なんだな、真面目に話ぐらい聞いてあげよう」と思ってくれるのです。
言い換えれば、そこまでしないと話を聞いていただける準備ができているとは言えないのです。
【話し方3】声のトーンを2倍に高めて話す
1、2では主に視覚情報について解説しましたが、最後の本項は聴覚情報についてです。
前述の通り、オンライン商談において聴覚情報の重要度の比重は対面に比べて格段に上がります。
このため、1、2が実践できていたとしても本項をおろそかにしてしまうことは避けたいところです。
オンライン上で会話する際には「声のトーン」を上げることを意識して下さい。
女性はもともと声が高いから安心、ということにはなりません。本番の緊張により声が低くなる現象は男女共通です。
理由は、リアル状態では雰囲気やオーラなど身体感覚の情報がカバーするため意識されないものの、それがないオンライン時には声の明るさに場の空気が左右されるためです。
相手に安心感を抱かせる声のトーンの高さは、普段の2倍を意識するとちょうどよいとされています。
2倍というと極端に高いと思われがちですが、緊張した状態における発声ではかなり低い声しか出ないのです。
トーン確認のためにはロールプレイングの録画や、トークスクリプト練習時にスマートフォンなどで録音してみると比較しやすいため、いずれかの方法を推奨します。
声のトーン調整により、顧客の反応は格段に変わってきます。オンライン商談における「表情」は、実際の表情に加えて声のトーンも構成していると言っても過言ではありません。
オンライン商談では表情・見た目・声のトーンを意識しよう!
オンライン商談は実際に顧客と対面する従来の商談に比べて、相手が受け取る印象が大きく違うことがわかりました。
印象の違いは、五感の変化によってもたらされます。
特に視覚情報や身体感覚などが大きく情報減衰するため、実際のビデオ通話画面に映る情報、聞こえる情報を万全な状態にしなければなりません。
オンライン商談で話す際に意識すべきことは、表情・見た目・声のトーンです。
ひとつひとつ確実にクリアし、オンライン商談の苦手意識を解消していきましょう。