顧客の懐により深く近づいたり、手際よくクロージングへ進んだりと、営業成績を上げるためにセールスパーソンには幅広いスキルが必要になります。
しかし、0から自分で学ぶには範囲が広く、カバーしきれないこともあります。また、ネットなどで「営業 スキル」と調べても、精神論などすぐに実践に活用しづらいノウハウやテクニック、スキルが公開されていることも多いのが現状です。
そこで今回は、セールスパーソンに必要な8つの営業スキルと、それを実践ですぐに活用し成果をあげるための方法についてご紹介します。
セールスパーソンに必要なスキルは8つ!
セールスパーソンには、以下8つのスキルが必要だといえます。こんなスキルがあるのか、といった参考にしてください。
- コミュニケーション能力
- 行動力
- トラブル対応力
- ヒアリング能力
- 課題発見力・ロジカルシンキング
- クロージング能力
- タイムマネジメント能力
- ストレス耐久力
続いての章から、詳しく解説します。
セールスパーソンに必要なスキル8つを身につける方法
本章からはセールスパーソンに必要な8つのスキルについて紹介した上で、どのようにすれば身につけられるのかについて解説しています。
もし、自分に足りない、身につけたいスキルがあると思う方は、ぜひ自分にできること・実践しやすそうだと思えたところから取り組んでみてください。
【スキル1】コミュニケーション能力
商談とは「会話の応酬が繰り広げられる場」であるため、セールスパーソンにはコミュニケーション能力が求められます。
アイスブレイクによって顧客の胸襟を開き、悩みを引き出せるかはコミュニケーション能力にかかっているといえるでしょう。
・自分がぐいぐいと話し過ぎていないか振り返ってみる
・顧客と自分の発話量のバランスを確認する
・録音できる場合は録音を、できなければ商談への同行、ロープレでベテラン社員に確かめてもらう
【スキル2】行動力
顧客のもとへ足を運ぶことがセールスパーソンの役割であるため、訪問につながるように行動を起こさなければなりません。つまり、日々どれだけ動けたかという結果を残すための行動力が必要です。
インサイドセールス部署がある場合は、積極的に連携することで温度感の高いリードをパスしてもらえるかも知れません。自分はこういった案件が得意だから是非回して欲しい、と呼びかけたり、部署合同の勉強会や社内セミナーなどを積極的に開催したり、参加してみると良いでしょう。
また自分の行動によって得られる顧客との「縁」は、新規顧客の紹介や業界独自の有益な情報提供といった副産物を生み出してくれます。人脈が広がることにより、それまで知らなかったビジネスマナーを身につけることもできるようになるでしょう。
このように、次に繋がる「人脈づくり」=「行動力」と捉えた上でセールスプロセスを進めることも、セールス活動を有利に運ぶために必要になってきます。
・営業のスケジュールから無駄を省くことを意識する
・行動しやすいように、および営業活動から無駄を省くために、セールス活動に優先順位をつける(例:既存顧客と属性が近い顧客からアポイントを取る、過去にアップセルできた顧客と似た購買行動をした既存顧客から再訪問をかける)
【スキル3】トラブル対応力
セールス活動では、1つの案件を成功させるために、自分ひとりだけでなく様々な部署が協力します。そのため営業支援ツールなどを用いて、属人化してしまわないように注意が払われますが、どれほど気をつけていてもどこかで見落とし・ご連絡など思いもよらぬトラブルが発生してしまうものです。
そこで、顧客の信頼を失い、失注にならないように、とっさのトラブルにも対応できる能力が必要になります。
・社内で共有されるマニュアルなどに日頃から何度も目を通して、起こりがちなトラブルを把握しておく(マニュアルが存在しない場合、同僚や他部署にヒアリングして雛形を作ってみる)
・ベテランのセールスパーソンに失敗談・その後の対応を聞いてみる
・自分の失敗から対応策を覚える
【スキル4】ヒアリング能力
セールスパーソンは商談において、顧客の悩みを引き出し、自分が取り扱う商材とマッチングさせて需要を喚起する役割を持っています。顧客の課題を探るためにはヒアリング能力が求められます。
「話しやすい雰囲気」を作るという意味ではコミュニケーション能力にも通じる部分です。
・アイスブレイクの時から「どんな話題について興味を持っているのか」というような、相手から反応を引き出しやすい話の切り出し方を探るように心がける
・過去の事例から、自社の商材が「どのような課題を抱えた相手」に「どのようにうまく刺さったのか」等について知識を得ておく
・業界研究などによる「仮説設定」を整える等、商談前の事前準備を怠らない
・5W1Hの中でも特に「Why(なぜ)」を深堀りして、顧客の本質的な悩みに近づく
【スキル5】課題発見力・ロジカルシンキング
ヒアリング能力があっても、肝心の「顧客の課題」を見つけられなければ意味がありません。そのため商談では課題発見力も必要です。前項にもあった仮説設定は準備としてしっかりとおこなっておきましょう。
また課題に近づくためには、得られた情報を整理して、論理的に答えへ到達するためのロジカルシンキング(論理的思考)も重要になります。
ロジカルシンキングの例は以下のようになります。
ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキングに基づいた会話を心がけることで相手への説得力・相手側の理解が深まり、話を強く印象付けられます。
どれほど準備を重ねても、実際に顧客と対面することで初めて得られる情報は多いものです。セールスパーソンはそういった状況にも感情的にではなく、理路整然と対応できなければ成約につながりません。
課題発見力・ロジカルシンキングの身につけ方は以下の通りです。
・常に顧客の気持ちとなって考える=当事者意識を持つ=仮説設定をする
・商談本番でいきなり課題発見力を発揮することは不可能なため、常日頃から・商談の準備段階から意識して「顧客の抱える課題とは?」という問題について向き合う習慣をつける
・担当する業界において前提となる知識の集積→インプットのために新聞やニュースに目を通し情報を集める
・固定概念や常識にとらわれず、物事の全体像を把握するように心がける
・集中して物事を考える時間を創出するために、タスクの優先順位を決める
・「なぜ」と疑問を持ち続ける
・論理的・合理的な考え方を養うため、日頃から情報を集めるように心がける(情報収集力の向上)
例:競合商品について調査し、メリットやデメリットなどを説明できるようになっておくことで顧客からの信頼を得る
【スキル6】クロージング能力
クロージングとは成約や受注に至るプロセスですが、成約や受注そのものをしなければならないわけではありません。
クロージングには、商談で、顧客に一旦「商材についての理解をしてもらえたか」を確認して、次のステップに進んでもらうための段階という役割もあります。
特に商材が高額だったり複雑なシステム・料金体系である場合は、即決がほぼ望めないため「一度商談を終わりにして、前向きに次回を迎えよう」とする効果があり、セールスパーソンにとって重要なスキルです。
・ヒアリングの場数を踏む(ヒアリングにより顧客の潜在課題をピックアップし、自社商材に結びつけ納得してもらう。この一連の経験を多く得る)
・ヒアリングを成功させるため、仮説設定などの事前準備を周到におこなう
【スキル7】タイムマネジメント能力
セールスパーソンは案件を同時進行することが多く、常に多くのタスクを抱えています。
ひとつの商談が終わったら帰社後にすぐフォローをおこない、次の日の商談の準備をするという日もままあるため、時間効率に気を配らなければなりません。
つまり「時間を無駄にしない」という考え方、タイムマネジメント能力が必要です。
・自分の営業活動をプロセスごとに区分けし、俯瞰してみる
・各プロセスに必要な時間を割り振る
・スマートフォンのスケジュール管理アプリなどに割り振った時間を組み込み、できあがった計画に合わせて行動する
・長距離移動の時間があれば何か業務ができないか考える
・インサイドセールスと連携して、同じ地方のアポを同日に組む、etc……
タイムマネジメント能力を身につけることで、無駄な残業からも解放されます。
【スキル8】ストレス耐久力
セールスパーソンは、毎日のように初対面の人とコミュニケーションを取ります。
また商談の内容も、すべてが思い通りに気持ちよく進むことはありえないため、否が応でもストレスが貯まります。
そのため、精神的に健康な状態でいられるように意識していないといつか潰れてしまうことでしょう。セールスパーソンにはストレス耐久力が必要です。
・同僚や上長など日頃から悩みや相談を聞いてもらえる相手を確保する
・失敗は「学び」であると発想を転換する
・7時間以上の睡眠時間を摂る
・3大栄養素(糖質・脂質・蛋白質)にビタミン・ミネラルを加えた内容を意識した健康的な食生活を維持する
・習慣的に深呼吸する
・身体を冷やさない
・デスクワークで1時間に一度は離席して身体を動かす
・1日に30分以上運動する
・ストレッチをする
・好きな映画や物語などを見て、笑ったり泣いたりする
スキルアップのためにセールスパーソンがすべきタスク5つ!
セールスパーソンには、求められるスキルが数多くあるとわかりました。
1つのスキルだけ訓練しても商談本番での対応がおろそかになってしまうため、必要なスキルそれぞれをまんべんなく育てるようにしましょう。
以下では、セールスパーソンに必要なスキルを平等に上達させるために、日頃から心がけるべきことを解説します。
【タスク1】徹底的に自己分析する
まずおすすめな行動は自己分析です。自分の内面を深く知ることで、「果たして自分の強みは何か、弱みは何か、どんなものに惹かれるのか」などがわかり、向いていることやいないことがはっきりするためです。
自己分析ができれば「向いていることをどのように自分に取り入れ、活かしていけばいいのか」「失敗してしまったことを繰り返さないようにするために、何をすべきか」といった自分に必要なスキルやナレッジの方向性がわかるようになります。
「何をどうしたらうまくいったのか、逆に何の時はうまくいかなかったのか」というような振り返りの癖もつけて、次に活かすことも意識してください。
【タスク2】目標を設定し、自己管理の環境を整える
時間通りにタスクを進めるために、あるいはリモート環境が増えた現代においては、自己管理する必要が以前より高まったといえます。
特に日本のセールスパーソンは、自分が持つ100%の時間のうち「顧客に対して営業活動をしている時間」は10~25%でしかないそうです。
営業活動内での時間捻出をするために、以下チェックリストのような項目について見直し、行動に起こすことでセルフマネジメント能力を鍛えてください。
- 異常に時間がかかっているプロセスはないか(各プロセスの作業時間を計測してみる)
- 業務全体における、商談の時間の割合は充分に確保できているか
- 案件ごとにクロージングするまでにかかった時間に大きな差はないか
- 営業プロセスごとにやるべきことを詰め込みすぎていないか、その逆はないか
- 顧客ごとにアポイント日や納期などの約束が守れなかった場合、理由は判明しているか
- 上記、各項目における時間の創出や達成ができていなかった場合、その原因が判明しているか
営業支援ツールを取り入れている企業の場合は、実務レベルに落とし込めているかの再確認も検討しましょう。ツールが適切に活用されていれば各部署の時間効率の改善を実現するためです。
また目標の設定には、以下のようなPDCAサイクルを回すことを取り入れてみてください。
Plan(計画する) | 改善点を身につけるための目標設定、計画を立てる |
Do(実行する) | 目標を達成するための行動を起こす |
Check(確かめる) | 目標を達成するために計画通り行動できたか検証する |
Act(動かす) | 新たな課題や改善点を踏まえて、次のPlanへ反映させる |
【タスク3】周りにアドバイスを求め、ナレッジを共有してもらう
社内のトップセールスや見習うべき能力を持った同僚がいる場合、現場に同行できるかどうか頼んでみましょう。社内で結果を残せているということは、自分が扱っているものと同じ商材をより上手に顧客に提供できていることを意味しています。そのため、成績上位の人々からはセールストークやビジネスマナーなど、学べることがたくさんあります。
また、社内での利他的な行動も意識してみましょう。他者の幸せを重視した行動を取ることで、信頼が得られます。企業とは組織であるため、例えば誰かの相談に乗って悩みを解決することで、自分に還元できることが見えてくるかも知れません。
【タスク4】書籍で学ぶ・セミナー参加
独学が向いている方には、書籍で学ぶこともおすすめです。書籍という形になった「体系化された知識」とは、再現度が高いことを意味します。つまり自分に落とし込みやすい可能性が高いのです。
また新しい知識を手に入れることは、これまで興味が湧かなかった分野へ興味を持つことへのきっかけとなります。さらに情報収集力も身につくため、空き時間や長い移動時間などには意識して読書してみてください。
独学にはどうも集中できないという場合には、会社を出て無料セミナー等に参加することをおすすめします。
昨今ではオンラインセミナーも多く、後追いの動画で学ぶこともできますができるだけオンタイムでの参加が望ましいです。集中力が得られ、内容をより落とし込める上に、周りの受講者の熱量を実際に見ることで自分のモチベーションが上がるためです。
これまでにない知識が得られるだけでなく、「悩んでいるのは自分だけではない」と思えることで刺激され、学びや仕事へのやる気につながります。
【タスク5】営業ロールプレイングを実施する
セールストークを身につけ、上達させるためには、社内でもできる営業ロールプレイングを取り入れてみてください。
ひとりで練習する方法もあります。
セールスパーソンには多様なスキルが必要。取りこぼしのないようにスキルアップを目指そう
セールスパーソンには「コミュニケーション能力」「行動力」「トラブル対応力」「ヒアリング能力」「課題発見力・ロジカルシンキング」「クロージング能力」「タイムマネジメント能力」「ストレス耐久力」といったスキルが必要です。
それぞれ身につけるためには異なる努力が必要です。自分にできるところからひとつひとつ取り組んでみてください。まずは自然とできることを探し、習慣化すると身につきやすいでしょう。
また、企業に属していれば実際に成果を出している人の行動を真似することで自分のスキルを上達させられることもあります。スキルアップは孤独な作業ばかりではありません。自分が集団に属していることを最大限に利用してください。
ひとつひとつのスキルを得て、伸ばすことができればいずれ結果がついてくるようになるでしょう。ぜひ自分にできることから始め、日々の行動に落とし込んでみてください。