売れる営業マンを効率的に教育するには?営業研修選びの6つのポイント

多くの企業では営業マンを対象にしたいろいろな営業研修が行われています。

この記事では、売れる営業マンを効率的に教育するための研修選びのポイントを6つご紹介しますので、営業研修選びの参考にしてください。

【監修者】 小沼 勢矢

【監修者】 小沼 勢矢

一般社団法人プロセールス協会 代表理事
中小企業サポートネットワーク「スモールサン」YOKOHAMAプロデューサー

脳科学の権威である石川大雅に師事し、40年間3万人以上の成功者の脳と向き合い確立して来た「実証的脳科学」を提供するプロ・アライブ社を承継。2代目経営者となり組織開発や人材教育の場数を踏み、8年で3,500人以上のクライアントに指導してきた実績を持つ。コロナ禍で営業に課題を抱えるクライアントが増加したことをきっかけに成約率80%を達成するための脳科学を基にしたセールスメソッドを確立。価値あるサービスを世の中に上手く届けられずに困っている事業者様を支援したいという想いから、一般社団法人プロセールス協会を設立。セミナー・コンサルティング・会員サービスなどの提供を行う。

営業研修とは?

企業が営業研修を行う最終的な目的は、自社の売上を増加させて利益を確保したり増加させたりすることです。

そのために、営業マンの成長ステージや経験に応じていろいろな営業研修を受講させているのです。

例えば、新人営業マンに最低限のことを教えるための新人研修、中堅の営業マンを対象としたスキルアップ研修、営業部門のマネージャーや管理職を対象とした営業マネジメント研修などがあります。

社内研修と社外研修の違い

研修には「社内研修」と「社外研修」がありますので、まずその違いとそれぞれの特徴について説明します。

社内研修

社内研修は、社内でカリキュラムなどが企画されて、社員やマネジメント層が講師役を務めて行うものです。

各企業には社風がありますので自社の社員が講師を務めると、その社内風土にあった研修内容となるため、受講者の理解度や納得感が高まります。

逆に、新しい気づきが得られにくいということも考えられますが、大きな費用がかからないという大きなメリットもあります。

なお、社内研修で営業研修を行う場合に、よく自社のトップ営業マンを講師にすることがありますが、「売れる営業マンが必ずしも教えることが上手いとは限らない」ということには注意しておく必要があります。

社外研修

社外研修は、外部の研修機関などに委託して研修を行うもので、カリキュラムが豊富に用意されていたり、そのカリキュラムに沿った各方面の専門家が講師を務めるなど、目的に応じて高度な研修を受けることができます。

営業マンが自発的に参加する場合は、モチベーションが上がり社内研修では得られない気づきが得られることがあります。

社外研修は、準備の手間などがかからない反面、相応の費用がかかります。

以下、この記事では主に社外研修について説明していきます。

営業研修の種類

営業研修は、対象者や目的などによっていくつかの種類に分けることができます。

まず、対象者による分類では、「新人研修」や「マネージャー研修」などがありますが、これらの研修は、営業マンの成長の各ステージにおいて全員が受講する必修の研修となっています。

新人研修

新人営業マンが、営業の基本、商談とはなにか、準備・アプローチ・ヒアリング・プレゼン・クロージングなどの営業プロセス、などを学ぶ研修です。

ロールプレイングなどの実習を取り入れることが多いようです。

マネージャー研修

営業部門の新任マネージャーやリーダーなどの管理職のための研修です。

管理職としてのマネジメント、複数人からなるチームをまとめて成果を上げるためのチームビルディング、人材育成など、営業部門の管理職として必要な内容を学ぶ研修となっています。

次に、スキルアップを目的にした研修には、「コミュニケーション研修」「課題発見研修」「情報収集ヒアリング研修」「ロジカルシンキング研修」「行動力向上研修」など各個人の営業能力を高めるための研修があります。

スキルアップ研修は、必修の研修ではなく個人の能力形成のためなどの必要性に応じて選択可能な研修となっている場合が多いようです。

コミュニケーション研修

顧客との信頼関係の構築に必要なコミュニケーションに関する研修です。

また、営業部門ならではの研修としては、営業プロセスの中の各フェーズに特化した「テレアポ研修」「セールストーク研修」「プレゼンテーション研修」「クロージング研修」などが行われることもあります。

セールストーク研修

テレアポなどのアプローチの際に利用するトークスクリプトに関する研修です。

プレゼンテーション研修

顧客の課題の解決策を効果的にプレゼンするにはどうすれば良いのかなどを学びます。

プレゼンテーション自体は営業独自の研修内容ではありませんが、商談におけるプレゼンに重点を置いた研修内容になっています。

営業研修選びの前にやっておくべきこと

社外の営業研修には相応の費用がかかりますので、営業研修選びを始める前にやっておかなければならないことがあります。

営業研修を行う目的を明確にする

まず1つ目は、営業研修を行う目的を明確にしておくことです。

新人研修やマネージャー研修などのように、成長ステージに応じて全員を対象として行う研修の目的や必要性については、誰もが理解できることですのであまり問題となることはないでしょう。

しかし、例えば新たなテーマで営業研修を始めようという場合は、何のために行う研修なのか、従来開催してきた研修とどう違うのかなど、その営業研修を行う目的を明確にしておく必要があります。

もし、目的が明確になっていない状態で研修選びを始めると、例えば「有名な先生が講師だから」とか「〇〇は新しい営業手法だから社員にもぜひ学ばせたい」というような理由で選ぶことにもなりかねず、自社に本当に必要な研修にならない可能性があります。

社内コンセンサスを得ておく

2つ目は、社内の経営層までのコンセンサスを得ておく必要があるということです。

なぜならば、受講者は研修の会場に集まらなければなりませんので、研修期間中は営業の実務から離れることになりますし、社外研修ではそれなりの費用が発生することになるからです。

営業マンの貴重な時間やコストをかけて開催するのですから、社内できちんとコンセンサスが得られた状態で研修選びを行う必要があります。

営業研修選びの6つのポイント

次に、社外の営業研修を選ぶ際に押さえておきたい6つのポイントについて説明します。

自社が抱えている課題をクリアできる内容か?

社外の営業研修選びの1つ目のポイントは、「自社が抱えている課題をクリアできる内容になっているかどうか」です。

営業研修選びをする際は、自社の営業部門が抱えている課題を解決することができる内容になっているかが大きなポイントになります。

ほとんどの企業は、営業力を強化して売上を伸ばし利益を上げて継続的に発展するために活動しています。

だからといって、単に営業部門の人員を増やしても営業力を強化することにはなりませんので、営業マン一人一人の営業スキルを向上させることが必要ですし、個人プレイではなくチームワークで成果を上げることが求められています。

そして、必ず何らかの「解決したい課題」を抱えているはずですので、まずはそれをはっきりさせて、その課題をクリアできるような研修を選ぶ必要があります。

例えば、「提案力が弱い」「マネージャーのリーダーシップや指導力が弱い」「チームワークが良くない」「組織的な営業が行われていない」など多くのの課題が考えられます。

これらの課題がすべて営業研修を受けることによって解決できるわけではありませんが、営業マン一人一人のマインドを変えるなど解決に近づくことはできるはずです。

研修のカリキュラムは実践的な内容か?

社外の営業研修選びの2つ目のポイントは、「研修のカリキュラムが実践的な内容になっているかどうか」です。

営業研修選びをする際には、その研修のカリキュラムが営業現場ですぐに実践できるような内容になっているかどうかを確認することも重要なポイントです。

まず、営業研修の実施スタイルについて考えてみましょう。

一般的に、営業研修の実施スタイルは、大きく次の2つに分けることができます。

【1】講義形式の研修

いわゆる講義形式の座学で行われるもので、考え方や知識などを受講者に理解してもらうための研修です。

内容としては「正論」なのですが、実際に現場でどうやるのかというところが理解しにくいというデメリットがあります。

【2】講義+ロープレの研修

講義で考え方や知識を学んだあとに、実際にロープレなどを行って知識の定着を図るように構成された研修です。

当然ながら【2】のロープレを取り込んだ研修スタイルの方が、より実践的な研修であることは間違いありません。

受講者自身がロープレを行うことにより知識を実践することができますし、他の受講者のロープレを見ることによる気づきも得られるでしょう。

次に、営業研修の内容について考えてみます。

営業研修のテーマが何かにもよりますが、「営業現場ですぐに使える内容を学ぶことができるか」も重要なポイントです。

受講者が「営業現場ですぐに使える実践的な手法やテクニックを学ぶことができるか」という点に着目して研修選びをすることも大切です。

顧客の心理についても学べるか? 

社外の営業研修選びの3つ目のポイントは、「顧客の心理についても学べるかどうか」です。

研修が顧客心理という視点についても学べる内容になっているかも重要なポイントです。

つまり、「企業対企業」の営業活動であったとしても、結局は売り手側の営業マンと買い手側の担当者との「人対人」の活動であり、商談が成約するかどうかは顧客担当者の心理状態によるところが非常に大きいと考えられるからです。

例えば、「営業マンは聞き役に徹するべきだ」とよく言われますが、これを顧客の心理から考えると「人は自分の話をよく聞いてくれる人に心を許す傾向がある」からなのです。

この顧客心理の説明があるかどうかで、「営業マンは聞き役に徹するべき」の理解度が変わってくると考えられます。

また、営業におけるクロージングテクニックとしてよく紹介される「ドア・イン・ザ・フェイス(door in the face)」や「フット・イン・ザ・ドア(foot in the door)」も、心理学に基づくものです。

「顧客の心理をどう掴みどう動かすのか」という心理学的な面についても学べるような研修が望ましいと考えられます。

講師の経歴や実績は適切か? 

社外の営業研修選びの4つ目のポイントは、「講師の経歴や実績は適切かどうか」です。

営業研修の講師が、どのような経歴や実績を持っているのかは大きなポイントとなります。

営業研修であることを考えると、実際に営業経験があり高い営業成績を上げた実績を持っている方で、かつ教えることについてもプロであることが望ましいでしょう。

実際の営業経験に基づく講義内容には説得力もあるでしょうし、受講者側にも納得感が得られやすくなり、理解も進むものと考えられます。

また、講義の中でロープレを行う場合も、より実践に近いアドバイスが受けられることが期待できます。

ただし、一匹狼タイプのトップ営業マンであって、誰にも真似のできないような属人的なやり方で営業成績を上げたような講師は適切とは言えません。

その人にしかできないことを学んでも、自社の営業マンにはできませんから、自社の営業成績を上げることにはつながりません。

自身の営業経験や営業実績に基づいて「再現性のある営業ノウハウ」を、教えてくれる講師を選ぶようにしてください。

研修費用は適切か?

社外の営業研修選びの5つ目のポイントは、「研修費用が適切かどうか」です。

営業研修を社外研修として実施する場合は、研修費用も大きなポイントとなります。

研修費用は委託先によってさまざまですが、大きく次のような3つのパターンの費用体系があります。

【1】研修の開催費用のみ研修の開催費用のみが決まっていて、参加人数は何名でも費用は変わらないケースです。
【2】(受講者1人あたりの費用)×(受講人数)受講者一人あたりの費用が決まっていて、これに受講者数を掛けるケースです。
【3】(研修の開催費用)+(受講者1人あたりの費用)×(受講人数)【1】と【2】を合算したケースです。

なお、【1】~【3】の費用以外に、研修会場の使用料などが別途必要となります。

このように、営業研修の受講予定者の人数によって総費用は変わってきますが、営業研修選びの優先度が高いのは研修の内容や講師が自社の求める営業研修に合っているかどうかであって、研修費用が安いかどうかではありません。

研修の内容をカスタマイズできるか?

社外の営業研修選びの3つ目のポイントは、「研修の内容をカスタマイズできるかどうか」です。

これは、前項の研修費用の他、これまでに説明してきたすべてのポイントに関連します。

研修の内容が、自社の商品やサービスに合っていなかったり、自社の方針と異なる研修内容になっていたりした場合に、その部分だけを変更してカスタマイズできるかどうかということです。

あるいは、研修内容などは全く問題はないのに、研修費用だけが予算をオーバーするような場合に、予算内に収まるように研修内容をカスタマイズしてもらえるかどうかというケースも考えられます。

通常は依頼企業に合わせてカスタマイズしてもらえることが多いようですが、念のために確認しておく必要があります。

自社の問題や課題を解決できる効果的な営業研修を選ぼう!

この記事では、売れる営業マンを教育するための社外研修選びのポイントを6つご紹介しました。

もし、「従来から行っている研修だから」とか「今までお願いしていた研修機関や講師の先生だから」という理由で漫然と営業研修を行っているということがあるとしたら、ぜひこの記事を参考にして再検討してみてください。

その研修は「自社の問題や課題を解決できる研修なのか?」「実践的で効果的なカリキュラムになっているのか?」などのポイントに着目して、自社にとって効果的な営業研修を選ぶようにしてください。