営業成績が思ったように上がらないときには、営業部門の中の問題点を洗い出して改善策を練る必要があります。
しかし、思いつきで場当たり的な対策を行っても思ったような効果が上がらないばかりか、かえって現場が混乱したりする恐れがあります。
このようなときに、営業部門の問題点を探る方法として営業分析が有効です。
この記事では、「営業分析について知りたい」「営業分析にはどんな手法があるのだろうか」と考えている経営者や役職者のために、営業成果を高めるために必須の営業分析手法についてご紹介します。
営業分析で用いられる3つの基本手法
まず最初に、「動向分析」「要因分析」「検証分析」という営業分析で用いられる3つの基本手法について説明します。
【1】動向分析
「動向分析」とは、業界や商品、サービスなどの大きな動き(同業他社の業績動向、自社商品の売上動向など)をグラフなどを用いて捉える分析手法です。
自社の商品の売上動向を月単位で調べたり、自社と競合他社との比較をすることによって業界の中で自社がどのようなポジションにあるのかなどもわかります。
動向分析は、このように大きな動きを捉えるための分析手法なので、各顧客に適した商品やサービスが何かを分析するようなことはできません。
この動向分析だけでは具体的な営業施策などのアクションにつなげることは難しいため、次項以降で説明する「要因分析」や「検証分析」などと組み合わせて検討することが必要となります。
【2】要因分析
「要因分析」とは、売上動向やその業界全体の動向に影響を与えている要因を捉える分析手法です。
前項の動向分析で捉えた大きな動きに関して、動向分析の結果がなぜそうなっているのか、その動向が何によるものなのかという要因を探る分析手法です。
様々な可能性を模索する要因分析を行うことによって本質に近づくことができますが、ここで注意しなければならないのは、仮に要因が推測できたとしてもそれは仮説の域を出ないということです。
つまり要因分析で得られた仮説をもとに営業施策を立案したとしても、必ずしも営業成績が上がるとは限らないということです。
そこで、動向分析と要因分析から得られた仮説をもとに、次に紹介する「検証分析」を行うことが必要になります。
【3】検証分析
「検証分析」とは、「動向分析」と「要因分析」から得られた仮説を検証していく分析手法です。
実際に仮説に基づくテストを実施して、得られた仮説が正しいのかどうかを細かく分析していくものなので、検証分析を行う場合は動向分析と要因分析がきちんと行われていることが大前提となります。
仮説が不明確なままで検証分析を行ってしまうと十分な検証結果を得られないことがあります。
営業分析の精度をさらに高める!より実践的な7つの営業分析手法
前項では、大局的な戦略立案に用いられる基本的な分析手法をご紹介しました。
ここでは、より実践的な7つの営業分析手法をご紹介します。
ここで取り上げる7つの分析手法のうち、「KPI分析」「エリア分析」「行動分析」は継続的に行ってこそ効果が現れてくるものです。
一度分析して戦略を立てたら終わりということではなく、その戦略を実行した結果を反映して、戦略を見直しながら修正していくことが重要となります。
1、KPI分析
「KPI」とは、「Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジケーター)」の略語で、日本語では「重要業績評価指標」を意味し、目標の達成度を示します。
つまり「KPI分析」とは、設定された目標に対して現状はどうなのかという達成度合いを可視化し、その経過や要因を分析した後、今後どうすれば最終的に目標を達成することができるのかという行動目標や数値目標をなるべく具体的に定めるものです。
営業活動では、売上高や新規顧客獲得数などをKPIとして設定しますが、他にもアポイント件数や成約率などが考えられます。
また、KPIは営業マンが自ら動かすことができる数値でなければなりません。
そのため、「商品の利益率」のような項目をKPIに設定することは避けましょう。
KPI分析の結果、目標達成に向けて取るべき行動や作業量などがわかりますので、営業計画を立てやすくなります。
2、エリア分析
「エリア分析」とは、商品やサービスのターゲット層(顧客)がどのエリアにどの程度居住しているのかを分析する手法です。
商品やサービスの種類によっては、居住ではなく勤務しているかを調べることもあります。
人口統計や年代構成、高齢者数などのデータを用いて、エリアごとの特性を分析し、その結果を基に「どの地域に重点的にアプローチするべきか」また「その地域に対してどのような宣伝・広告をすれば効果的なのか」などの戦略を立てることが可能になります。
その後、目標通りの営業成果が得られたのかどうかを確認して、必要に応じて戦略を見直すまでがエリア分析の大まかな流れです。
3、行動分析
「行動分析」とは、営業マン1人1人の行動を詳細に分析して、その傾向から成果につながる法則を見つけだすことによって、営業部門全体の成果の底上げをしようとする分析手法です。
具体的には、「成績の良い営業マンはなぜ良いのか」「成績の悪い営業マンはなぜ悪いのか」などの要因を行動データや実績から探り出します。
そして、得られた知見を共有することによって、営業マンのスキルを平準化して営業部門全体の成果の向上を目指します。
一般的な営業部門では、成績の良い営業マンや悪い営業マンが混在しているのは当然のことです。
そこで行動分析を活用することで、成績の良い営業マンの行動の中から成果に結びつく要因を見つけだし、ノウハウを全員で共有して実践することによってスキルの向上を図ることができるのです。
また、行動分析はノウハウの共有だけにとどまらず、個々の営業マンが得意とする商品や顧客、エリアなどを見つけだすことができるため、どの営業マンにどの商品や顧客・エリアなどを任せるべきかを決めるような際にも有効です。
4、商談分析
「商談分析」とは、商談時におけるトーク内容や提案資料を見直して、より効果的な商談手法を検討するために行う分析方法です。
商談時のトークや提案資料の内容は、成約率に大きな影響を及ぼすため、この「商談分析」は非常に重要となります。
しかしながら、実際の商談の場には顧客と営業マンしかいないため、「どのような営業トークや提案が行われたのか」「顧客がどのような反応をしたのか」などの詳細はブラックボックスとなっています。
そこで、商談での経験をアウトプットすることにより、優秀な営業マンのノウハウを共有することを目的として商談分析を行うのです。
具体的には、以下のような内容を記録していきます。
- 営業マンはどのような提案をしたのか
- 営業マンの提案に顧客がどのように反応したのか
- 顧客はどのように行動したのか
- 顧客の行動に対してどのようにフォローしたのか
商談分析は営業部門内で共有化できますし、商談トークスクリプトや提案資料などに反映することができます。
また、後述のSFAに、商談記録として詳細に記入しておけば情報共有しやすくなるのでぜひ実践してみてください。
5、顧客分析
「顧客分析」とは、主に自社製品やサービスを購入した顧客の属性と購買行動を分析して、購買率や顧客満足度を改善するために行うものです。
具体的には、商品やサービスを購入した顧客の性別や年齢層、居住地といった基本情報のほか、購入頻度などの購買行動を分析します。
顧客分析を行った結果を数値化することによって現状を把握することで顧客のニーズを満足させているかどうかを検証し、自社の商品やサービスをより良いものに改善していくことが目的です。
顧客分析の最終的な目的は業績を上げることなので、顧客分析の結果から自社の強みが客観的に確認できれば、効果的なマーケティング施策と効率的な営業活動につなげることができます。
6、クラスター分析
「クラスター分析」とは、多くのデータが混在している集団の中から共通点を見出し、近いもの同士の集団(クラスター)に分類して分析する手法のことです。
一見何の関連性もないように見えるデータを、近いもの同士の集団に分けることによって、混在した状態では分からなかった情報が見えるようになります。
分類の切り口は、性別、年代、収入、職業、地域などの基本属性に限らず、意識や行動特性といった観点で分類することもあります。
クラスター分析によって顧客を分類することができ、その分類に応じて商品やサービスのアピール方法を変えたり、営業戦略を立てたりすることが可能です。
また、クラスター分析によって、他社が参入していないマーケットが発見できる可能性や自社や競合のポジショニングが明確になる可能性もあります。
7、営業パイプライン分析
「営業パイプライン分析」とは、企業の営業活動の一連の流れである「パイプライン」を分析するもので、顧客とはじめて接点を持った時点から成約にいたるまでの流れをパイプラインとみなします。
パイプライン分析を行うことによって、まずは売上目標を達成するためのボトルネックが判明し、判明したボトルネックを改善することによって営業活動全体の効率化を図ること可能になります。
また、個々の営業マンの強みや弱みも分かりますので、売上向上にも効果的です。
パイプライン分析をしていくにあたって重要なのは、成約にいたるまでのステップをすべてパイプラインとして細分化することです。
代表的なパイプラインの例としては、「イベント」「問い合わせ」「初回訪問」「見積り提示」「継続的なフォロー」「クロージング」「成約」「納品」などがあります。
これらのパイプラインの各ステップのデータを収集し、定量的に分析することによって、営業活動の弱点や改善点を洗い出すことが可能です。
より効率化したいならSFAやCRMを導入するのがおすすめ!一体どのようなシステムなの?
一方で異なる点は、SFAが営業部門のためのシステムであるのに対して、CRMは顧客に関わる全ての部門ためのシステムである点が挙げられます。
「SFA(営業支援システム)」と「CRM(顧客管理システム)」を導入することによって、より効率的な営業分析ができるようになります。
SFAやCRMには、営業活動や顧客情報を管理する機能があるので、各顧客の契約状況や営業活動の履歴などの情報を社内で共有することが可能になります。
SFAとCRMの概要とそれぞれの違いについては、次の通りです。
SFAとCRMの違い
SFAとCRMは営業活動に関する情報を管理するのか、顧客に関する情報を管理するのかという点で異なります。
SFAが営業部門のためのシステムであるのに対して、CRMは顧客に関わる全ての部門ためのシステムとなっています。
そもそも「SFA」とは、「Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)」の略語で、「営業活動自動化」と訳されます。
SFAは、営業活動を効率化するシステムやツールを指し、既存顧客や見込顧客に対する商談情報や折衝情報などを細かく記録管理することができるようになっています。
営業マンは過去の商談履歴や現在折衝中の案件の進捗状況、顧客に関する重要情報、その他スケジュール情報などを簡単に知ることができるので、営業活動の効率アップが期待できます。
一方、「CRM」とは、「Customer Relationship Management (カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」の略語で、「顧客関係管理」と訳されます。
CRMは、顧客満足度と顧客ロイヤルティを高めることによって、企業の売上の拡大と収益性の向上を目指すという経営戦略のことですが、昨今ではシステムのことをいう場合もあります。
CRMの目的は、すべての顧客情報を管理することで営業部門だけでなくマーケティング部門や開発部門、アフターサービス部門など、顧客に係るすべての部門がCRMの顧客情報を確認しながら戦略を立てることができるようになることです。
精度の高い営業分析を行って営業成果を高めよう!
この記事では、営業分析の基本手法である「動向分析」「要因分析」「検証分析」という3つの分析手法と、より実践的な営業分析手法である7つの分析手法を紹介しました。
まずは「動向分析」「要因分析」「検証分析」の3つの基本的な分析を行い、加えて「行動分析」や「エリア分析」「行動分析」「商談分析」「顧客分析」「クラスター分析」「営業パイプライン分析」などによって細部にわたる分析を行うことが望ましいでしょう。
分析手法はひとつに頼らず、複数の手法を組み合わせて精度の高い営業分析を行い、営業成果の向上を目指しましょう!