リードクオリフィケーションはマーケティング活動の一つですが、今この活動が営業部門の効率化のために有効な手法として注目されています。
この記事では、これからリードクオリフィケーションの導入を考えている方のために、リードクオリフィケーションとは何か、リードクオリフィケーションのメリット・精度を高めるために重要なポイント・導入手順などについて詳しく解説します。
リードクオリフィケーションとは?
「リードクオリフィケーション(Lead Qualification)」とは、購入可能性が高い見込み顧客を絞り込んで選別するマーケティング活動のことです。
BtoBマーケティングでは、「リードジェネレーション」によって獲得した見込み顧客を、「リードナーチャリング」によって育成し、最後に「リードクオリフィケーション」によって絞り込んで選別し、購入可能性の高い見込み顧客として営業部門に引き渡します。
この「リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)」「リードナーチャリング(見込み顧客の育成)」「リードクオリフィケーション(見込み顧客の絞り込み・選別)」からなる一連のプロセス全体のことを「デマンドジェネレーション(営業案件の創出)」と言います。
営業部門では、「リードクオリフィケーション」によって絞り込んで選別された購入可能性が高い見込み顧客に対して、無駄のない営業活動を行うことができますので、営業効率を高めることができます。
リードクオリフィケーションのメリット
まず、リードクオリフィケーションを導入することによって、どのようなメリットが得られるのかについて説明しましょう。
メリット1:見込み顧客に優先順位をつけられるので、営業効率が向上
1つ目のメリットは、リードクオリフィケーションによって見込み顧客に優先順位をつけることができるため、営業効率が向上するということです。
前項で説明したように、リードクオリフィケーションは、購入する可能性が高い見込み顧客を絞り込んで選別するマーケティング活動です。
この情報を引き継いだ営業部門では、購入可能性が高い顧客だけに対してきめ細かいアプローチをすることができますので営業効率が上がり、結果的に成約率も向上します。
これは見込み顧客側にとってもメリットがあり、ニーズが高い顧客ほど営業のフォローを受けられるということになります。
逆にニーズや関心がまだ高まっていない顧客にとっては、迷惑な営業活動を受けなくても良くなるというメリットもあります。
リードクオリフィケーションを効果的に行うことによって、自社にも顧客にもメリットが生まれます。
メリット2:営業部とマーケティング部の連携・情報共有のきっかけ
2つ目のメリットは、リードクオリフィケーションの導入が営業部門とマーケティング部門の連携強化や情報共有のきっかけになることです。
どちらも会社の売上に貢献するという目標があるにもかかわらず、多くの会社では営業部門とマーケティング部門が犬猿の仲だとか、意見の相違が起きやすいなどという実態があるようです。
また、「営業がちゃんとフォローしてくれない」「成約につながらない顧客情報が多すぎる」などという双方の不満もよく聞かれます。
この原因としては、顧客情報がきちんと共有されていないことが挙げられ、その結果として双方の連携がうまくいかずに成果が上がらないということになってしまうのです。
リードクオリフィケーションを導入すると、営業効率の向上や成約率の向上にはどのような顧客情報が必要なのか、購入可能性の高さはどうやって評価すれば良いのか、などについて意見交換をして合意しなければならなくなります。
また、これらについてはPDCAサイクルを回して常に見直していかなければなりません。
リードクオリフィケーションを導入することによって、営業部門とマーケティング部門との間の意見交換が活発になり、連携や情報共有がうまくいくようになることが期待できます。
リードクオリフィケーションの3つの方法
次に、リードクオリフィケーションの3つの方法について紹介します。
リードクオリフィケーションは、「デマンドジェネレーション」の最終プロセスであり、営業部門へ確度の高い見込み顧客情報を引き渡す活動です。
ここで紹介する3つの方法のうち、「シナリオの設計」と「カスタマージャーニーの設計」はリードクオリフィケーションだけではなく、「デマンドジェネレーション」全体に関わる重要な方法ですので、マーケティング部門だけではなく営業部門も含めて事前に十分な検討を行っておく必要があります。
【1】スコアリング
「スコアリング」とは、見込み顧客を絞り込むために、その属性や行動に応じた重み付けをして点数を付けることです。
リードクオリフィケーションを行う際には、多くの見込み顧客の中から優先度の高い見込み顧客をどのようにして絞り込むのかが問題になるのですが、「スコアリング」は定量的に絞り込みを行うことができる方法です。
例えば、役職や企業規模、所在地などの属性に対して、部長は10点、課長は5点、従業員1000名以上は10点、資本金1億円以上は5点、などのように加点します。
また、行動については、セミナー参加の場合は15点、資料請求ならば10点、メルマガ購読は3点、メルマガのリンククリックは5点などのように加点します。
絞り込みを行う際には、顧客ごとに属性の点数と行動の点数の合計点を算出し、この合計点の高い見込み顧客ほど自社の商品やサービスに対する関心が高く、行動を起こしていると判断します。
合計点が一定の点数以上の顧客情報を「購入確度が高い見込み顧客」として営業部門に引き渡します。
【2】シナリオの設計
リードクオリフィケーションで効果を上げるためには、事前の「シナリオの設計」を入念に行っておく必要があります。
ここで言う「シナリオの設計」とは、見込み顧客が自社の商品やサービスと接点を持ち、実際の購入に至るまでの一連のプロセスの設計のことです。
つまり、リードクオリフィケーションの前のプロセスであるリードジェネレーション、リードナーチャリングも含めた「デマンドジェネレーション」全体のプロセスの設計のことを指します。
「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」からなる3つのプロセスは連動していますので、「シナリオの設計」がうまくいっていないと最後のプロセスであるリードクオリフィケーションでも良い結果を出すことができなくなります。
「シナリオの設計」で最初にやるべきことは、自社の商品やサービスのターゲットを決めて「ペルソナ」を設定することです。
「ペルソナ」とは、自社の商品やサービスが想定する架空の顧客像のことで、「50代の男性」というような大まかなものではなく、属性はもちろん好みや行動などまで詳細に設定する必要があります。
ただし、BtoBビジネスにおいては購入選定者、最終決裁者、利用者が異なるケースが多いため、複数の「ペルソナ」を設定することもあります。
「ペルソナ」を設定することによって、顧客目線での検討が可能になり、また関係者全員で顧客像が統一されるというメリットが生まれます。
「シナリオの設計」によって、顧客の購買意欲を高めるための施策を細かく検討することができるようになりますので、顧客の状況に合わせたアプローチがタイミングよく行えます。
【3】カスタマージャーニーの設計
「カスタマージャーニー(Customer Journey)」とは、見込み顧客が自社の商品やサービスを認知してから購入に至るまでの「購買行動プロセス」を旅に見立てたものです。
「カスタマージャーニー」は、「購買行動プロセス」を「行動」だけでなく「思考」や「感情」も含めて考えることに特徴がありますので、前項の「シナリオ」に顧客の「行動」や「思考」「感情」を加えたものと考えても良いでしょう。
この「購買行動プロセス」をいくつかに分けて、それぞれのプロセスごとに見込み顧客との「接点」や「思考」「感情」「行動」を追記して図式化したものを「カスタマージャーニーマップ(Customer Journey Map)」と言います。
これによって、見込み顧客が自社の商品やサービスを知った後に、どんな思考をしてどんな感情を持つのか、次にどんな行動を取るのかといったことが可視化できます。
「カスタマージャーニーマップ」を作成しておくと、見込み顧客が今どのプロセスにいるのかということを関係者全員で共有することができ、それぞれの接点ごとのニーズや課題が分かり、どのような情報やコンテンツなどを提供すべきなのかが分かります。
「カスタマージャーニー」によって、見込み顧客に対して取るべきアプローチの方法が明確になります。
リードクオリフィケーションの精度を高くするために重要なポイント
リードクオリフィケーションを活用すると、購入可能性の高い顧客情報を営業部門に渡すことができますが、さらにその精度を高めるために重要な4つのポイントがあります。
ポイント1:目標(KGI)の設定
注文件数、売上高、売上向上率などの具体的な「数値目標(KGI)」を設定することによって社内一丸となって行動できるようになります。
また、「数値目標(KGI)」に基づいた「重要業績評価指標(KPI)」を設定することも可能となります。
「重要業績評価指標(KPI)」によって一人一人が取り組むべき業務も明確になりますので、マーケティング部門においても営業部門においても、より具体的な行動につなげることができるようになります。
ポイント2:PDCAを回し続ける
前述のように、事前のシナリオの設計やカスタマージャーニーの設計が重要ですが、「PDCA」を回し続けることによって継続的に見直しをすることが大切です。
このシナリオやカスタマージャーニーは、一度設計したものをずっと使い続けるのではなく、実際の運用結果をフィードバックすることによってより良いものになっていきます。
また、リードクオリフィケーションの要となるスコアリングの配点も、購入に至った顧客とそうでない顧客の行動などを比較することによって、見直しを行う必要があります。
ポイント3:営業部とマーケティング部の密な情報共有
リードクオリフィケーションを導入することによってマーケティング部門と営業部門との間のコミュニケーションや情報共有が活発になります。
特に、購入可能性が高いと判断されて営業部門に渡された顧客が、実際に購入したのかどうかという情報はPDCAを回すための貴重なフィードバック情報となります。
リードクオリフィケーションの精度を高めるためには、営業部門からのより密なフィードバックや双方のより緊密な連携がないと難しいでしょう。
営業部門とマーケティング部門の密な情報共有によって、より良いものにブラッシュアップしていくことが重要です。
ポイント4:最後は必ず人力で見極める!
リードクオリフィケーションでは、様々な基準で見込み顧客を絞り込んで選別していくことになりますが、最終的に「その人が本当に購入可能性の高い見込み顧客なのか」という判断は人力で行った方が良いことがあります。
特に、スコアリングで判断する場合には、同じスコアの人でも行動パターンが全く違っている可能性もありますので、最終的には人力で選別することが重要となります。
リードクオリフィケーションはどのように導入すべき?おすすめの導入手順!
最後に、リードクオリフィケーションのおすすめの導入手順を紹介します。
【手順1】まずは簡易的に導入してみる!
リードクオリフィケーションのためには、シナリオ設計やカスタマージャーニー設計が必要だと説明しましたが、まずは簡易的に導入してみることも一つの方法です。
例えば、BtoBビジネスを行っている会社で取り扱っている商品やサービスは多岐にわたることが考えられますが、最初はその中の1商品に限ってみて試行してみる方法があります。
その対象となる1商品に関わるマーケティング部門と営業部門の担当者間で話し合って、簡易的なリードクオリフィケーションの仕組みを検討しましょう。
その上で、見込み顧客の属性や行動パターンなどを考慮したスコアリングを行い、明らかに点数の高い顧客については営業部門でフォロー活動を行うようにします。
定期的にリードクオリフィケーションの効果の確認や見直しなどのための情報交換を行いましょう。
このように、まず少ない商品や少人数での簡易的な試行を行うことによって、リードクオリフィケーションの有効性を確認することができます。
【手順2】簡易実施結果を元に、社内でリードクオリフィケーションの手法を確立
次に、簡易的な試行結果をもとに、対象商品やサービスを増やしていって社内でリードクオリフィケーションの手法を確立していきます。
併せて、シナリオやカスタマージャーニーの設計にも着手しましょう。
自社で取り扱っている商品やサービスの特性などによって、シナリオやカスタマージャーニーも変わってくると思われますが、この段階でシナリオやカスタマージャーニーの設計をきちんと行っておく必要があります。
他社における導入事例を参考にしたり、次項で説明するMAツールのベンダーに相談してみることも良いでしょう。
【手順3】MAツールを使って自動化できる部分を自動化する!
リードクオリフィケーションを始めとするマーケティング活動を本格的な行うためには、大量の顧客情報を収集して分析し、絞り込み、選別する必要があります。
これを人手で行うとすれば膨大な手間がかかると同時に、個人間の判断のズレや人為的なミスなどが生じやすくなります。
これを防ぐためには、MA(マーケティングオートメーション)ツールの活用が望ましいと思われます。
MAツールの導入によって、リードクオリフィケーションの自動化と業務の効率化を図ることができます。
リードクオリフィケーションを導入し、営業効率を向上させよう!
受注可能性の高い見込み顧客を選別するリードクオリフィケーションは、営業活動の効率アップのために重要なプロセスであることがご理解いただけたものと思います。
事前のシナリオ設計やカスタマージャーニー設計、スコアリング設計などを入念に行い、自社に最適なリードクオリフィケーションが導入できれば、営業効率の向上や受注率の向上に寄与できる有効なツールとなります!