商談がまとまると、自社の売上が上がり利益につながり、営業マン自身の成績も上がります。
しかし、常にうまくいくとは限らず、顧客にお断りされたり他社に契約を取られたりすることもあります。
そこでここでは、この商談について詳しく説明するとともに、商談の準備や一般的な進め方、マナー及びうまくまとめるコツについても解説します。
営業マンになったばかりの新人の方はもちろん、改めて商談についてきちんと理解しておきたいという方にもぜひ読んでいただければと思います。
商談とは?
商談とは、見込み顧客と自社の商品やサービスに関する取引を始めるための話し合いや交渉のことです。
具体的には、見込み顧客が抱えている課題や困りごとを、自社の商品やサービスを利用することによって解決できることを提案して、導入するメリットや費用などについて説明するなどして契約に向けての交渉を行います。
商談に参加するのは、一般的に売り手側は営業マン、買い手側は商品やサービスの導入部門の担当者や管理職などですが、商談の最終段階になると買い手側の決裁権を持つ役員などが出席することもあります。
また、場合によっては自社の商品やサービスを利用した解決策の提案について、役員会などでプレゼンをする機会が設けられることもあります。
商談の内容や進め方は、商品やサービスが具体的にどのようなものか、あるいは価格帯、会社規模などによって異なることがありますが、お互いに合意ができると成約となり、契約書を交わすことになります。
商談の目的
商談の目的は自社の商品やサービスを購入してもらうことですが、だからといって最初からいきなり商品やサービスの詳しい説明を始めるようなことはありません。
挨拶やアイスブレイクで場を和ませたりしながら、顧客へのヒアリングをして課題や困りごとを聞き出すことから始めるのが通常のやり方です。
その後、聞き出した課題や困りごとを解決するために、自社の商品やサービスを使った解決策を提案します。
一般消費者向けの商品とは違って、企業向けの商品やサービスは基本仕様は決まっていますが、細かい仕様はそれぞれの顧客の業種や用途、使い方に合わせて変更することになりますので、必要に応じて技術部門や開発部門に詳細検討をしてもらうこともあります。
顧客の購入意欲が高まるかどうかは、提案した解決策の効果やメリット、費用などが顧客に受け入れられるかどうかによります。
しかし、商談の相手が決裁権者ではないような場合は、直接その決裁権者にプレゼンなどをする機会を設けてもらったり、商談の相手から伝えてもらうことも必要となります。
売り手である営業マンは、買い手である顧客の決裁権者に購入の意思決定をしてもらうことが商談の目的であることを常に意識して、そのために何をすべきかを考えて行動することが大切です。
また、商談をすれば必ず成約に至るということはありませんので、少しでも多くの見込み顧客と商談の機会を持ち、ビジネスチャンスを獲得する必要もあります。
商談と打ち合わせの違い
営業マンが、顧客と行う話し合いには、「商談」と「打ち合わせ」があります。
どちらも顧客と面談を行うことですが、その目的に違いがあります。
商談とは、前述のように顧客と取引を始めるための話し合いや交渉を行う場であって、その目的は自社の商品やサービスを購入してもらうことです。
一方、打ち合わせとは商談以外の面談のことを言いますが、多くは商談で成約した後のフォローや状況説明などを目的に行うものです。
商談までのプロセス
商談に至るまでのプロセスを理解することによって、商談についての理解が深まります。
商談までのプロセスには、一般的には「見込み顧客リストの作成」「アポイントの獲得」があり、アポイント獲得後に訪問して商談のプロセスに入ります。
見込み顧客リストの作成
見込み顧客リストとは、自社の商品やサービスを購入していただける可能性のある会社の一覧ですが、これは営業部門が作成することもありますし、会社によってはマーケティング部門が作成することもあります。
また、いろいろな展示会が開催されていますので、それに出典してブースに立ち寄って興味を示してくれた会社の情報をもとにすることもあります。
リストに記載されている情報は、会社名、業種、会社規模、所在地、電話番号、担当部署・担当者、情報入手経路などです。
アポイントの獲得
見込み顧客リストを参照しながら、電話をかけて面談のアポイントを取ります。
電話でアポイントを取るという行為から「テレアポ」と言われており、会社によってはテレアポ専任の営業部門が設けられていることもあります。
テレアポ用のトークスクリプトが用意されている会社もありますし、想定質問に対する回答をまとめたFAQを準備している会社もあります。
見込み顧客に電話をして、アポイントが獲得できた場合は、相手企業の担当者に挨拶を兼ねたメールを送っておいた方が良いでしょう。
どちらかが日時を間違えたりすると、せっかくのアポイントが無駄になるばかりでなく、相手から不信感を持たれたりする可能性があるからです。
商談の準備
見込み顧客とのアポイントが獲得できたら、実際に顧客を訪問して商談を行いますが、事前に入念な準備作業をする必要があり、この準備作業によって商談がうまくいくかどうかが左右されます。
顧客の会社や業界のリサーチを入念に行なう
商談の準備作業として必ず行う必要があるのは、見込み顧客の会社や業界のリサーチです。
具体的には、顧客の会社の事業内容や直近数年間の経営状況、顧客企業が含まれる業界の動向を調べることです。
また、もし担当者が分かっていれば、出身地や趣味などを調べておくと、商談の途中にアイスブレイクとしてその話題を入れることによって親近感をもってもらえるきっかけになるかもしれません。
顧客の抱えている課題や解決策を考えておく
顧客の経営状況や業界のリサーチ結果から、顧客の抱えている課題やニーズ、あるいは顧客が描く理想の姿を想定しておくことも必要です。
そして、その課題やニーズに応えるために、自社の商品やサービスを利用した解決策が提案できるようにしておくことも必要です。
商談の場で、いかに自社の商品やサービスの良さばかりを説明したとしても、それがどのように役に立ち、どうやって困りごとを解決してくれるのかが分からなければ購入してもらえないでしょう。
顧客は、会社のニーズや困りごとに対してどのような解決策を提供してくれるのかを期待しています。
なお、実際に顧客と商談をして聞き出した課題やニーズが、事前に想定したものと違っていることがあるかもしれませんが、仮説を立ててそれに対する解決策を考えるという習慣を持つこと自体が大切なのです。
商談の一般的な進め方
商談の進め方は、商品やサービスの種類や会社の規模などによりいろいろなケースが考えられますが、ここでは複数回にわたる商談の場合の一般的な進め方について紹介します。
まず、自己紹介の挨拶と自社の紹介をきちんと行いましょう。
商品やサービスの説明に入る前にちょっとしたアイスブレイクを入れて堅苦しくならないようにすることも大事です。
自社の商品やサービスの説明ばかりに終始するのではなく、相手企業の課題などについてもヒアリングをするよう心がけましょう。
初回訪問で何らかの課題や困りごとがつかめた場合は、さらに深堀りをしましょう。
初回訪問でヒアリングができなかった場合は、適切な質問を投げかけるなどして課題や困りごとを聞き出すように努めましょう。
顧客の課題や困りごとを解決するために、自社の商品やサービスを利用した解決策の提案を行います。
解決策の内容によっては、技術部門や開発部門の専門家を同行させて説明やプレゼンを行うことも考えましょう。
導入によるメリット、予算規模、納期などについても説明し、顧客の購買意欲を高めるようにします。
解決策の提案が終わったら、顧客の購買意欲が高まったことを確認してクロージングをかけます。
商談のどの段階でクロージングをかけるかということは営業マンが見極めなければなりません。
提案内容に双方が合意したら成約となり、契約書を取り交わします。
その後は、詳細仕様や納期の確認など商品やサービスの導入に向けてのフォロー業務を行います。
商談におけるマナー
商談を気持ちよくスムーズに進めるためには、挨拶や名刺交換の仕方などの最低限のマナーには気を付けましょう。
特に、商談の時間に遅れることは絶対に避けなければなりません。
しかし、だからと言ってあまりに早く着きすぎるのも迷惑ですので、5分前を目標に到着するように努めましょう。
しかしながら、不測の事故、電車の遅れなどはあり得ることですので、その際は必ず事前に連絡をするようにしましょう。
たとえ1分であっても遅れることが分かった時点で連絡をしましょう。
その他には、当然のことながら、「髪は乱れていないか」「ネクタイは曲がってないか」「服にゴミがついていないか」「名刺はすぐに取り出せるか」「携帯電話はマナーモードになっているか」などについては、必ずチェックしておきましょう。
商談をまとめるコツ
商談とは、前述のように見込み顧客と取引するための交渉を行う場であり、最終的には自社の商品やサービスを購入してもらうことです。
ですから、商談をまとめて成約を得て契約書を結ぶことが求められるわけですが、商談をまとめるにはコツがあります。
以下に、商談をまとめるためのコツの中から3つ紹介します。
コツ1:顧客の話をよく聞きヒアリングに徹する
1つ目のコツは、顧客の話をよく聞きヒアリングに徹することです。
商談の場で成約に結びつけることを焦るためか、商品やサービスを売り込むという意識が先に立って、一方的に商品の良さを話したりする営業マンがいます。
しかし、商談では顧客が主役であり、営業マンは主役である顧客の要望に応えることが役割ですから、顧客の話をよく聞きヒアリングに徹することが大切です。
このような、聞くことに徹した商談によって顧客から信頼を得ることができ、顧客と営業マンとの距離が縮まります。
また、顧客に対して適切な質問を投げかけて困りごとやニーズを聞き出し、そのニーズに応える形で自然に商品提案を行うことができます。
顧客は、特に初めて会う営業マンから「押し売り」をされることを嫌う傾向がある反面、自分の話を聞いてくれる人には気を許す傾向がありますので、聞き役に徹することによって成約に結びつく可能性が高くなります。
コツ2:ゴールを設定しておく
2つ目のコツは、商談におけるゴールを設定しておくことです。
商品やサービスの種類や、面談の相手の企業規模、面談相手との関係性などによって、商談の進め方は大きく変わってきます。
例えば、はじめての顧客に対して初回の商談でクロージングをして成約できるケースもあるでしょうし、すでに納入実績がある顧客であっても成約するまで何回もの商談を積み重ねなければならないケースもあります。
ここで言うゴールとは、それぞれの商談の段階において達成すべき事項を決めておくということです。
ゴールの例をいくつか紹介します。
- BANT条件を確認する(Budget:予算、Authority:決裁権者、Needs:ニーズ、Timeframe:購入時期)
- 競合他社とのコンタクト状況を聞き出す
- 会社が抱えている課題や解決したい問題点を聞き出す
- 役員会でのプレゼンを申し入れて了解をもらう
これ以外にもいろいろなゴールが考えられますが、各商談の前には適切なゴールを設定して臨むことを習慣にすると、緊張感をもって自分主導で商談を進めるという自覚が生まれるはずです。
コツ3:ロープレをして自分の弱点を知っておく
3つ目のコツは、ロープレをして自分の弱点を知っておくことです。
ロープレというと、経験の浅い新人営業マンがやるものだというイメージがありますが、経験年数によらず積極的に行うべきものです。
商談の準備やゴールの設定をしっかりと行っていたとしても、相手がまったく予想外の質問や言動をすることがあるかもしれません。
このように、準備が不足しているところを見つけたり、自分の弱点がどこにあるのかを知るためにロープレは有効な手段です。
ただし、ロープレをするためには第三者に協力してもらう必要がありますし、時間も必要になりますので、商談のたびに毎回行うのは難しいかもしれません。
クロージングをゴールとして設定した大事な商談の前などには、マネージャーなども含めたロープレを行い、問題点を発見して解決策を練った上で自信を持って商談に臨むようにしましょう。
準備なき商談は無意味!入念な準備をして商談をまとめよう!
この記事では、商談とはなにか、商談までのプロセスや準備、一般的な進め方、マナー、うまくまとめるコツなどについて解説してきました。
記事の中でも説明した通り、顧客企業のリサーチ、顧客の課題や解決策の検討、ゴールの設定、ロープレなどは、いずれも事前に行うべき重要かつ必須の準備作業です。
これらの入念な準備作業を行って商談に臨み、ぜひ成約を得るようにしてください。